TOP 3/2018
#1. KANYE WEST - GHOST TOWN
#2. KREVA - 存在感
#3. LOGIC - GRANDPA'S SPACE SHIP
“ストーブの上に手を置く”なんて、どうかしてる。気でも触れたのか。狂気の沙汰としか思えない。恥知らずの大馬鹿者……。常識はずれな言動をとって、案の定バッシングの嵐という手痛いやけどを負ってしまったわけだが、さんざん苦しみぬいたからこそ見ることのできる景色もある。囚われていることにすら気づけない人間に、決して“自由”は獲得できない。「奴隷制は選択」という発言には、常識とよばれるものに絡めとられた、受動的な態度をかえりみるべきという真意が込められていたのではなかったか。まず手を置いてみないことには、熱さも痛みもわからない。カニエ・ウェストの人となりを表現するのに用いたストーブの比喩は独創性に富み、かつ超キャッチー。070シェイクのソングライティングの才に万雷の拍手をおくりたい。
“存在感はある”けれど……。自己批評のようであり、同時に有象無象のラッパーたちに対するけん制にも聞こえる。この曲につづく「俺の好きは狭い」で、“好きだからこそ似たようなだめなものに厳しい”とヒップホップへの並々ならぬ情熱を語るのを聞くと、なおさらそう思えてくる。台頭するマンブルラッパーたちの未来を、飽きられてリアリティショーのタレントに落ちぶれるのがせいぜい関の山だろうと予言したJ・コールと同じく、ヒップホップのオーセンティシティを問うているかのようでもある。助詞一文字のちがいで意味が大きく変わる日本語の特性を活かした表現も、ひじょうにフレッシュ。
“どのロジックのことを言ってんの?”って、それ自分で言っちゃうの!? ストリーミング聴取の定着によって、アルバムとミックステープの垣根がなくなった時代に対するひとつの解答例。おまけに、“なりたい自分になれるとか、平等がどうとか、そういうメッセージめいたのは聴きたい気分じゃない”とまで口にする始末である(KREVA顔負けの自己批評だ)。ミックステープではトラップビートの上でおっぱいやパーティについてラップする一方、アルバムでは平和と愛と楽観主義についてラップできてしまうロジック=現役最強のラッパー説をここに提唱しよう。