2017年4月23日日曜日

ケンドリック・ラマー「You Ain't Gotta Lie (Momma Said)」



『世界と僕のあいだに』を読んで、そして『ムーンライト』を観て、黒人コミュニティを覆う、タフであれ、という空気の存在を見知った今、Kendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)の「You Ain't Gotta Lie (Momma Said)」の「気張んなくていいんだよ(大意)」という言葉は、より深く胸にしみるというもの。ストリートに張り詰めるテンションをやさしく解きほぐす。





マーヤ・ヴァン・ウァーグネン『マーヤの自分改造計画』



 マーヤ・ヴァン・ウァーグネン『マーヤの自分改造計画』読了。学園映画で見る世界そのまま! 実録“社会的はみだし者”。マーヤが自分改造計画の末に心得た「世界を変えたければ、まずは自分が変わらなきゃ」という教訓は、ジョーイ・バッドアスと(マイケル・ジャクソンを引用した)レゴバットマンも同じことを言っていたなあ。


Joey Bada$$ - "Land of the Free"


Man In The Mirror - Alex Aiono - The Lego Batman Soundtrack



『Everybody』のアトム



 Logic(ロジック)の『Everybody』(17年)の主人公アトムがその正体だと思われるロボットはあそこに顔が映るのか。アトムは「Everybody=みんな」の象徴だから、聴くひとそれぞれがアトムに自己を投影できるということなのかな。



2017年4月16日日曜日

『13の理由』のサウンドトラック〜FML



 ネットフリックス製作のドラマ『13の理由』(17年)は自殺した少女ハンナが死の直前に残したカセットテープに吹き込んだ、彼女の死の理由をめぐるお話だ。本作の公式サウンドトラックはあるけれど、それとは別に、Lil Peep(リル・ピープ)のミックステープ『Hellboy』(16年)が登場人物の心情にぴったりだなと思った。自殺願望について歌った「OMFG」など、『Hell Boy』と『13の理由』には共鳴するところがあるように思う。表題曲「Hellboy」で、恋い焦がれる女子からの連絡を一晩中待つも、メールの一通も届かず、怒りと孤独に震える様子は、『13の理由』のジャスティン、ジェシカ、アレックスあたりの恋心模様を連想させるし、同曲で歌われるサビ「You don't even know what I've been through(俺のことなんてこれっぽっちもわかんねえくせに)」は、ハンナをはじめとするリバティ高校のみんな及び、世界中のティーンエイジャーが抱える思春期特有のエモーションを表現していると言えよう。「FML」の気分は、リル・ピープの音楽のなかでも鳴っている。


Lil Peep - "Hellboy"

ロジック「Black SpiderMan」




ヴィンス・ステイプルズ:コーチェラの会場をぶらついて、黒人を祝福する週末。
男:何を祝ってんの?
ヴィンス・ステイプルズ:黒人であることだよ。
男:それなら俺も病院で白人の新生児に対して同じことをするんだけど、どういうわけか人種差別主義者扱いされるんだよね
ヴィンス・ステイプルズ:お前、ロジックみたいなやつだな

 これはVince Staples(ヴィンス・ステイプルズ)と彼の発言に絡んできた男とのツイッターでの会話である。コーチェラを楽しむヴィンスに男が水を差す。男は「troll」と呼ばれるような、いわゆる「釣り、荒らし」の類なので真剣に取り合う道理はないが、ヴィンスの発言の揚げ足をとって、白人に対する逆差別(この場合は黒人が黒人であることを祝うのは許されるのに、白人がそれをすると人種差別だとされること)を言っているのだ。くだらない。ヴィンスは男の狙いをわかったうえで、あえて言葉を額面通り(生まれついた人種を誇りましょう)受けて、皮肉とユーモアを込めて「Logic(ロジック)みたい」と返しているのだろう。
「Black SpiderMan」は、この会話で取り沙汰されているロジックというラッパーの性格を体現したような曲である。既報通り、「Black SpiderMan」はロジックのバイレイシャルという自身の立場に依って、肌の色、宗教、性的指向による差別や排斥に対するアンチテーゼを歌っている。政治的に正しく、崇高なメッセージだ。僕は感動したのだけど、ヴィンスの発言を考えると、そういった多様性の尊さを声高に叫ぶロジックの態度が、真面目くさった、鼻持ちならない、嘲笑の的とされていることが伺われ、あらためて人種問題の複雑さを思い知らされるのである。翻って、それゆえにブラック・スパイダーマンの誕生が希求されるのだ。


Logic - "Black SpiderMan (feat. Damian Lemar Hudson)"



2017年4月14日金曜日

ロジック、『Everybody』のコンセプトを語る



「アトムは仕事から帰宅する道すがら交通事故に逢い、死んでしまう。白い空間で目覚めた彼は神との対話を通じて、自分が生き返りを遂げようとしていること、さらに、彼という存在はこの世に生を受けたあらゆる人間であるということを悟るんだ」

Logic(ロジック)が『Everybody』(17年)のコンセプトをこのように語っているインタヴューでの発言とあわせて考えるに、このアトムという人物がアートワークに描かれたミステリアスなロボットの正体だと思われる*1。またこうしたコンセプトに従い、アルバム収録曲はそれぞれ複数の異なる人物(エヴリバディ)の視点から歌われているという(黒人シングルマザー、カミングアウトできないゲイ、ストリートのゴロツキなど)。ロジックがビデオの最後で言う、(ドナルド・グローヴァーの顔パネルを掲げて)「このアルバムはステレオタイプとの闘い。スパイダーマンは黒人が演るべき」というメッセージは、ドナルド・グローヴァーを『スパイダーマン』の新シリーズの主役に推すファンたちによる運動 #DonaldForSpiderman を踏まえての発言であるが、その意味とは*2。アルバム収録曲「Black SpiderMan」を待とう。


Logic reveals new album EVERYBODY CONCEPT!!!!!

*1:『Everybody』を聴き終えて追記。ロボットの正体はアトムではなかった。ゼイン・ロウのインタヴューによれば、その正体は次作『Ultra 85』にて明らかになるらしい。

*2:ロジックとドナルド・グローヴァー=チャイルディッシュ・ガンビーノには、「白い」と揶揄されてきた共通点がある(前者は外見が、後者は音楽的に)。二人は過去に「Driving Ms. Daisy」という、人種差別の根強い南部を舞台にユダヤ系白人と黒人の交流を描いた同名映画をタイトルに冠した曲で共演しており、人種問題を取り上げた曲だと予想される「Black SpiderMan」は再共演を果たす絶好の機会であるように思われるが、ガンビーノは不参加となっている。



2017年4月8日土曜日

ジョーイ・バッドアス「Land of the Free」



 Joey Bada$$(ジョーイ・バッドアス)「Land of the Free」のポーカーにかけたパンチラインが秀逸。ジョーイがフルハウス(Three K's, two A's in AmeriKKKa)なら、ファイヴカード(Three J's, two A's in JJJapan)で勝てる(ズルだけど)。


Joey Bada$$ - "Land of the Free"



バリー・ジェンキンス『ムーンライト』〜ジャネール・モネイの役どころ



『ムーンライト』(16年)鑑賞。本作を観たあとは、出演者のひとりでありシンガーのJanelle Monáe(ジャネール・モネイ)のアルバムを繰り返し聴いている。28世紀の未来都市メトロポリスを舞台にしたSF仕立ての彼女の3枚のアルバム『Metropolis: Suite I (The Chase)』(07年)、『The ArchAndroid』(10年)、『The Electric Lady』(13年)は、連作でひとつの壮大な物語になっている。<ロボットの恋>を禁じるこの世界のルールを破り、人間との恋に落ちるジャネール扮するアンドロイドのシンディ・メイウェザーをめぐりストーリーは展開される。作品内でほのめかされるように、この物語に登場するロボットは、現実社会における人種・宗教・性的マイノリティなど、虐げられた人々のメタファーだ。抑圧されたアンドロイドを自由と解放に導くシンディの歌と踊りは、近年のブラック・ライヴズ・マター運動とも重なるアファーマティヴ・アクションと見ることが出来るだろう。一方でシンディの存在を不愉快に思う人間の「ロボットの恋はクィアだ!」という心無い発言にも暗示的なように、許されざる恋という設定はLGBTの境遇を連想させる。虐げられた人々の救世主シンディ=ジャネールが、『ムーンライト』でゲイの主人公の庇護者を演じているのは実に気の利いた配役である。月のモチーフを用いた「Many Moons」という曲の一節は、そのまま映画の役柄を体現しているかのようだ「世界から不当な扱いを受けたなら、私のもとへおいで、家へ連れ帰ってあげる」。



2017年4月2日日曜日

ロジックとジェシカ・アンドレア



 Logic(ロジック)の『Everybody』(17年)のジャケット写真には、ロジックのミュージシャン仲間や友人など大勢の人物が描かれているのだけど、中央手前には彼の妻であるジェシカ・アンドレアの姿が確認できる。モデルの彼女は自身のユーチューブチャンネルを持っており、投稿ビデオには夫ロジックが出演することもある。このカップルがすごくキュート! これぞ理想の夫婦。ヒップホップ界のおしどりカップルを決める際には、カーター夫妻でもキムエ夫妻でもなく、ロジックとアンドレアの二人を推したい。#RelationshipGoals


Logic & His Wife: Funniest Couple Moments

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2017年4月1日土曜日

ロジック『Everybody』のアートワーク



 Logic(ロジック)の3rdアルバム『Everybody』(17年)のジャケット写真が公開された。前作『The Incredible True Story』(15年)、前々作『Under Pressure』(14年)に引き続き、本作のアートワークもアーティストのサム・スプラットが手がけている。サム・スプラットが今回のアートワーク制作に至る経緯を明かしている。曰く、ロジックが旅のなかで出会った『カナの婚礼』という絵画に着想を得たという。また、ロジックがインタヴューで語ったところによれば、『カナの婚礼』でイエスが占める位置に座っているロボットは、本作のテーマ「Everybody=みんな」を象徴しているとのこと。ロジックがアートワークにサンプリング手法を用いたのはこれが初めてではない。『インターステラー』の宇宙探索ストーリーをなぞらえた物語が展開される前作『TITS』のアートワークは、ウェス・アンダーソンの『ライフ・アクアティック』のヴィジュアルイメージを参照したものだった*1。さらに『Everybody』は、アンディ・ウィアーの『The Egg』という短編を下敷きにしているらしい。このサンプリング精神旺盛な作風は、もちろんヒップホップの伝統ではあるけど、これまで作中で何度も言及されてきた、ロジックの大好きなタランティーノの作風からも影響を受けているのは間違いない。


Logic - Everybody (Album Trailer)


 ロジックは黒人の父を持つも、肌の色が白いために、白人扱いされ差別を受けてきた。粗悪な家庭環境で育ち、白人の母にはNワードで呼ばれていたという。『Everybody』は、バイレイシャルの人間としての立場から人種問題に向き合った作品になるようだ。

これまでのアルバムでは深く踏み込んで触れずにいたテーマについて話したいと思う:俺の人種についてだ。この曲は、俺が経験した差別がほかの人の経験よりひどいとかそうでないとか言いたいわけではない:今日の世界そしてアメリカに生きるバイレイシャルの人間として経験してきたことについての、俺の純粋な感情の発露である。他者の視点に基づいた、お前はこうだからとか、お前は違うとかいう決めつけや、他者からの承認が自己承認につながるのだという考えは、社会によって信じ込まされてきた残忍な嘘である。俺はどんな人種差別、憎しみ、暴力を経験しようとも、鏡に映る自分を愛し続ける。物事は白黒つけるべきだと言われるけれど、俺はそうした考えは無視して、あるがままにこの世界を受け入れる:色とりどりの多様性を。この曲は俺のアイデンティティについてだけでなく、みんなからアイデンティティを奪おうとする奴らとの闘いについての歌である。 


Logic - Everybody

*1:惑星パラダイスに到達して“人生”に遭遇する壮大な結末に限っては『インターステラー』というより、『ゼロ・グラビティ』で地球に帰還したサンドラ・ブロックが大地を踏みしめるときの感動を想起した。

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