2017年10月15日日曜日

タイラー・ザ・クリエイター『Flower Boy』レビューを寄稿しました@FNMNL



 タイラー・ザ・クリエイターの来日公演『Flower Boy』(17年)の国内盤発売にあわせて、FNMNLさんにレビューを寄稿しました

 このブログでタイラーについて思いつくままに文章を書きなぐってきたわけですが、このたび念願叶って原稿仕事をもらえて大感激。大げさだけど、タイラーの「Find Your Wings(翼を見つける)」というメッセージにしたがって、好きなこと(タイラー!)を探究しつづけてきて本当によかった。お声がけくださったFNMNLの和田さん、ありがとうございました!

 レビューではタイラーの気分について考察しています。原稿の執筆にあたって、キッド・カディの『Man On the Moon』(09年)を繰り返し聴いた。レビューにも書いたことだけど、「Pursuit of Happiness」はタイラーのいまの心境をあらわすのにまさにぴったりの曲だと思う。乱暴に要約するなら、『Flower Boy』は意気消沈したタイラーの「幸せを探す旅(ドライブ)」である。本当の幸せはどんな車に乗るかでなく、誰と乗るかということ。

Kid Cudi - "Pursuit of Happiness"

『Man On the Moon』とタイラーの『Bastard』(09年)が同じ年のリリース作品というのも興味深い。『Bastard』は「父の不在」がタイラーに大きな影を落として、あのような作品になっている。一方、カディも「Soundtrack 2 My Life」の曲中で打ち明けているように、お父さんを早くに亡くしたことで精神を病んでしまい、それが作品に影響している(Since my father died, I ain't been right since)。

 その後、キッド・カディは、鬱と自殺衝動をおさえるためのリハビリ治療を受けることに。いま、巷では鬱を歌ったラップソングが流行っているけれど、キッド・カディが「あ〜」とか「う〜」とかうなっている、『Passion, Pain and Demon Slayin'』(16年)収録の「Releaser」という曲には、ほかの曲にはない「本物らしさ」が漂っている。(このアルバムのなかでは、ウィロー・スミスとの「Rose Golden」がお気に入り。今年のキャンプ・フログ・ノーには二人とも出演するので、パフォーマンスに期待!)


 ラナ・デル・レイはデビュー後、あの「ラナ・デル・レイ的イメージ」(退廃的ロマンス、絶望、ドラッグ、死など)が作り物のまがい物であるという批判にさらされた。レビューで引用した「ピッチフォーク」のインタビューでは、そのことについても質問がおよび、彼女は「私はいつだってありのまま。ああいう人たちこそ、何がオーセンティック[本物]かわかってないのよ」と話している。『Lust for Life』(17年)からの先行シングル曲としてリリースされた表題曲のミュージックビデオの舞台が、作り物の極北たるハリウッドなのは、そういった批判へのあてつけか。

Lana Del Rey - "Lust for Life"

『Flower Boy』の国内盤には特典でステッカー(GOLFロゴ、猫、ミツバチの3種)がついてくるので、輸入盤を買った人もストリーミングで聴いたという人も買って損なしですよ!歌詞カードを読んであらためて思ったけど、ダブルミーニングを多様するタイラーはラップが上手い。さらに、いまタワーレコードで買うと特典ネックストラップまでもらえちゃいます。それから、渋谷のタワーレコードではタイラーのサイン会が開催!もちろん僕も行きます!わくわく。どきどき。

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2017年9月16日土曜日

ロイ・エアーズ「Everybody Loves the Sunshine」〜Just Bees and Things and Flowers



 タイラー・ザ・クリエイターのお気に入り曲を集めたSpotifyのプレイリスト『T'S PLAYLIST』を聴いていて、はたと気づいたんだけど、『Flower Boy』(17年)に見られる花、ミツバチのモチーフは、ロイ・エアーズ「Everybody Loves the Sunshine」に影響されているのではないか。「Just bees and things and flowers」。「Rusty」で歌われる「部屋にこもってネットばっかやってないで、外で遊ぼうぜ」という考え方も、ロイ・エアーズのこの曲譲りなのかもしれない。ほかにも『T'S PLAYLIST』を聴いていると、タイラーのあの曲の元ネタではと思わせるような発見があって楽しい(「I Ain't Got Time!」はデスティニーズ・チャイルド、「Mr. Lonely」はメイナード・ファーガソン、など)。タイラーが主催する音楽フェス「Camp Flog Gnaw Carnival」に、今年はロイ・エアーズが出演する。ロサンゼルスの陽の光を浴びながら聴く「Everybody Loves the Sunshine」生演奏が楽しみだ。


Roy Ayers - "Everybody Loves the Sunshine"


Destiny's Child - "Get On the Bus"


Tyler, The Creator - "I Ain't Got Time!"


Maynard Ferguson - "Mister Mellow"


Tyler, The Creator - "Mr. Lonely"

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ロジック来日



 ロジックが来日している『The Incredible True Story』(16年)でクリストファー・ノーラン『インターステラー』(14年)を、そして『Everybody』(17年)ではアンディ・ウィアーの短編小説『The Egg』(09年)をそれぞれ下敷きにしてアルバムを作ったロジック。旅先の美術館で出会った絵画に着想を得て『Everybody』のコンセプトが生まれたように、東京にやってきたロジックの次作『Ultra 85』(TBA)は、『AKIRA』のような日本の作品が題材になったりして(『TITS』のジャケット写真でロジックが着ている赤いジャケットは『AKIRA』が元ネタだ)。次回来日するときは、ライヴ公演をよろしくお願いします。

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2017年9月10日日曜日

アジズ・アンサリのインタビュー@「GQ Style」〜find some time to do something



 アジズ・アンサリのインタビュー@「GQ Style」のつづき。インターネット断ちして、本を読んでいるという話がとても興味深い。ツイッター、インスタグラム、メールなど、インターネット関連のアプリをすべて消したアジズ曰く、ネット中毒の現代人は、コンテンツの中身に関係なく、とにかく何か新しいものを見るためにネットに接続しているという。僕もiPhoneは便利な反面、時間泥棒にもなる恐ろしい道具だと思っていたので、アジズの考えには頷ける。とはいえ、さすがにネット断ちは真似できないけれど、iPhoneとの接触機会を減らすべく、LINEはやらないと決めている。ただ、初対面の人と連絡先を交換する段になったとき、LINEをやっていないと伝えるとすごい驚かれる。SNS中毒といえば、様々な文脈の「みんな」について歌ったロジックの『Everybody』(17年)のなかで、一番心に刺さった「みんな」が「Killing Spree」の「みんなケータイ画面のなかに人生を見出している」という歌詞。ネット依存に警鐘を鳴らすのはロジックだけでない。飛躍した解釈かもしれないけど、タイラー・ザ・クリエイターが「Boredom」のサビで繰り返し強調するメッセージ「find some time to do something」は、前作『Cherry Bomb』(15年)のテーマ「find your wing」の言い換えであるように思う。SNSに没頭したり、他人を妬んで噂話をしたりして無為に時間を過ごすのでなく、好きなことを見つけて有意義に生きろ、というのが、タイラーが『Cherry Bomb』で言わんとしていたことではないだろうか*1『君にともだちはいらない』などの著作で知られる瀧本哲史さんもこう言っている。「やりたいことが見つからない人もいる。やりたいことがあってもすでに道が閉ざされている人もいる。道があっても、向いていない人や専念できない人もいる。そうした中、やりたいことが見つかって、道があり、邁進する条件も揃っていて、あとは自分の努力だけなら、Just do itでしょ」


Tyler, The Creator - "Boredom"


Logic - "Killing Spree (feat. Ansel Elgort)"

*1:「Rusty」でも同じようなことを言っている「俺の世代の奴らはみんな揃いも揃ってレザーを着込んで、MDMAでトんでいる/天気が良いのに外で遊ばず、部屋にこもってタンブラー」

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2017年9月4日月曜日

MASTER OF NONE〜アジズ・アンサリとタイラー・ザ・クリエイター



 ドラマシリーズ『Master of None』(15年〜)が批評的に大成功をおさめたアジズ・アンサリが「GQ Style」誌のインタビューで、仕事は順風満帆だけど、私生活では孤独だし、うまくいってるけど、山のあとには谷がやってくるもの、というようなことを悲しげに語っているのを読んで、タイラー・ザ・クリエイターのことが頭に浮かんだ。『Flower Boy』(17年)におけるタイラーも、順調なキャリアに反して、虚無や孤独の悲しみについて歌っている。「November」という曲では、「クランシー(註:クリスチャン・クランシー。タイラーのマネージャー)に裏切られたらどうしよう/会計士が脱税して、懐を潤してたらどうしよう/俺の音楽ってやっぱり変わってるのかな/すべてを失って、ボロアパート暮らしに逆戻りになったらどうしよう」と没落することへの不安を吐露している。音楽、映像、ファッション、テレビ番組制作、フェス運営など、何でもできちゃう多才ぶりを発揮するものの、私生活では独りで寂しいタイラーこそ、まさに「マスター・オブ・ナン(器用貧乏)」なのであった。


Tyler, The Creator - "November"

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