2017年8月20日日曜日

欅坂46「エキセントリック」とSIMI LAB「Uncommon」



 もしも、いま自分が『glee/グリー』を製作中のライアン・マーフィーの立場だったら、欅坂46の「エキセントリック」とSIMI LABの「Uncommon」をマッシュアップする。


欅坂46 - "エキセントリック"


SIMI LAB - "Uncommon"

タイラー・ザ・クリエイターの2017年お気に入り映画



 タイラー・ザ・クリエイターは、ウルフ・ヘイリー名義でミュージックビデオを撮る映像作家の顔を持ち合わせているだけあって、大の映画好きでもある。どれだけ好きかというと、作中に架空の映画館「ムーン・シアター」が登場する4thアルバム『Cherry Bomb』(15年)のリリースツアーでは、訪れた先々で映画館を借りて、タイラーのお気に入り作品を上映する「出張ムーン・シアター」が行われたほどだ。そのタイラーがツイッターで今年公開された映画の中からお気に入り作品を発表した*1。『20センチュリー・ウーマン』*2は、「アートかぶれの軟弱野郎(art fag)」と揶揄されてしまう主人公に、似たような文化系少年だったタイラー自身を重ねて観たんじゃないかな(母子家庭育ちのスケボー少年という境遇もタイラーと同じだ)。




フリー・ファイヤー(原題:Free Fire)
監督:ベン・ウィートリー
脚本:ベン・ウィートリー、エイミー・ジャンプ
出演:ブリー・ラーソン、キリアン・マーフィー、アーミー・ハマー、サム・ライリー、シャールト・コプリー


グッド・タイム(原題:Good Time)
監督:ジョシュ&ベニー・サフディ
脚本:ロナルド・ブロンスタイン、ジョシュ・サフディ
出演:ロバート・パティンソン、ジェニファー・ジェイソン・リー、バーカッド・アブディ、ベニー・サフディ


20センチュリー・ウーマン(原題:20th Century Women)
監督:マイク・ミルズ
脚本:マイク・ミルズ
出演:アネット・ベニング、グレタ・ガーウィグ、エル・ファニング、ルーカス・ジェイド・ルマン、ビリー・クラダップ


A Cure for Wellness
監督:ゴア・ヴァービンスキー
脚本:ジャスティン・ヘイス
出演:デイン・デハーン、ジェイソン・アイザックス、ミア・ゴース

*1:当該ツイートは削除された。四作品中、三作品がA24の作品だが、ステマに非ず
*2:劇中、ドロシーがバーのジュークボックスでかける曲が良かったので曲名を知りたいのだけど、サントラには未収録だし、どこにも情報がない。

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2017年8月13日日曜日

カリ・ウチース「Call Me」〜タイラー・ザ・クリエイターのミューズ



『Cherry Bomb』(15年)で起用されてからというもの、カリ・ウチースはタイラー・ザ・クリエイター作品には欠かせないミューズ的存在となっている。カリが参加した「PERFECT」は、惹かれ合いながらも年齢差が恋の障害になっている男女のカップルという設定だった。そして『Flower Boy』(17年)のカリ参加曲「See You Again」もまた、決して結ばれることのない悲しい恋の歌だ。平井堅よろしく、瞳を閉じたときにだけ会える、夢の中の理想の人物を想い歌うタイラーの相手役をカリが務めている。『Flower Boy』の最後、タイラーは留守番電話に向かって愛の告白をするものの、結局その想いは相手に届かず終わるわけだけど、カリがソロ曲「Call Me」(プロデュースはタイラー)で、「孤独なときは、私に電話して」などと歌うのを聴くと、これだけ相性が良いのだから、タイラーはカリに電話して付き合っちゃえばいいのにと、余計なお節介を焼きたくなる。(「PERFECT」のミュージックビデオで、途中スプリット画面の一方がズームアウトして、タイラーの隣に中性的な顔立ちの少年[もう一人のゲストであるオースティン・ファインスタイン]が現れるのは、いま考えれば、そういう意味の演出だったのか、と読めなくもない)

Kali Uchis - "Call Me"


Tyler, The Creator - "PERFECT (feat. Kali Uchis & Austin Feinstein)"

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タイラー・ザ・クリエイター『Flower Boy』とアンドレ3000『The Love Below』



第三の重要人物
 Spotifyに「T'S PLAYLIST」という、タイラー・ザ・クリエイターのお気に入り楽曲をまとめたプレイリストがある。400曲、30時間超えにもなるこの長大なプレイリストを一見しても分かるように、タイラーは大の音楽マニアとして知られる。4thアルバム『Cherry Bomb』(15年)は、それらお気に入り作品から抽出した音楽的エッセンスをふんだんに注ぎ込んだ作品であった。たとえば、アルバムのオープニング曲「DEATHCAMP」では、タイラーがオールタイムベストに挙げるN.E.R.D.の『In Search Of...』(03年)で聴けるギターサウンドを大胆に模倣している。「DEATHCAMP」に限らず、『Cherry Bomb』の多くの収録曲で、そうした模倣(あるいは広義のサンプリング)が試みられている。お気に入り作品の意匠を旺盛に取り込み、「自分の好きな音色を奏でる」という表現手法は、タイラーがこの作品で伝える「翼を見つけて、好きなことをやる」というメッセージの体現でもある。

N.E.R.D. - "Lapdance"

 ことあるごとにタイラーはファレル・ウィリアムスのファンであることを公言してきた。実際にタイラーの作る音楽は、シンセサイザーの使い方など、ザ・ネプチューンズからの影響を色濃く感じさせる。
 またもう一人、エミネムもタイラーにとっては重要な存在である。暴力的なオルターエゴを心の内に飼っているというタイラーの初期作品の設定は、エミネムと彼のオルターエゴ、スリム・シェイディをお手本にしている。3rdアルバム『Wolf』(13年)の制作過程を追ったドキュメンタリーフィルムを見ると、タイラーの部屋に『Relapse』(09年)のポスターが貼られているのが確認できる。心を病んだタイラーを診療する精神科医ドクター・TCという作中のキャラクターは、この『Relapse』に収録された、マーシャル・マザーズ(エミネム)と医師の会話を収めたスキット曲から着想を得たのだろうし、タイラーが狂信的なファンに付きまとわれる「Colossus」*1は、エミネムに憧れるやばいファンの男の狂気を描いた「Stan」の変奏曲と言えるだろう。タイラーの初期三部作『Bastard』(09年)、『Goblin』(11年)、『Wolf』の異常な世界観は、エミネムの存在なしには生まれなかったと言っても過言ではない。

Eminem - "Dr. West (Skit)"


Tyler, The Creator - "Colossus"

 そのほかにもスティーヴィー・ワンダーなど、タイラーが影響を受けたミュージシャンは数多い。しかし、そのなかでもファレルとエミネムからは直接的に大きな影響を受けているのは間違いない。

 ここでさらにもう一人、タイラーに大きな影響を与えた第三の重要人物として、アウトキャストのアンドレ3000の名前を挙げたい。ファレルやエミネムに比べると、タイラーがアンドレに言及する機会は少ない。それでも、アウトキャストのお気に入りアルバムに『The Love Below』(03年)を挙げている。同作は、アウトキャストのメンバー、ビッグ・ボーイとアンドレのそれぞれのソロ作をまとめた二枚組アルバムのうちの一枚。先に結論から言ってしまうと、タイラーの5thアルバム『Flower Boy』(17年)は、この『The Love Below』を下敷きにしているのではと考えている。そのように考える理由として、これより以下はタイラーとアンドレの作品における共通点を見ていく。確たる根拠とまでは言えないが、そうかもしれないと思えるぐらいには説得力のある考察になっていると思う。前述の「Colossus」という曲に登場するような、タイラーの狂信的なファンによる深読みだと思って読んでもらいたい。

Let's go to the movies
 タイラーの前作『Cherry Bomb』の中盤には、ガールフレンドを助手席に乗せ、「ムーン・シアター」という映画館に三本立ての特集上映を観に行くという展開がある(「2SEATER」)。この筋書きが「Prototype」という曲で女性を映画に誘うアンドレの歌詞の一節を想起させるのだが、タイラーがこの曲から着想を得て、『Cherry Bomb』のストーリー展開に発展させたと考えるのは、さすがにこじつけだろうか。また、アンドレ扮する異星人と地球人が出会って恋に落ちる「Prototype」のミュージックビデオと、同じく男女の運命的な出会いを歌った「FUCKING YOUNG」のミュージックビデオのルック(画)が、どことなく似た雰囲気を持っているような気がするのだが(草花など)、これも穿った見方だろうか。


Outkast - "Prototype"


Tyler, The Creator - "FUCKING YOUNG"

半獣
 ミュージックビデオにおけるビジュアル面の類似点といえば、オッド・フューチャーのコンピレーションアルバム『The OF Tape, Vol.2』(12年)に収録された「Rella」のビデオには、半獣のタイラーが登場する。それまでタイラーは、自分のことをユニコーンであるとたびたび公言していたが、この姿かたちは喩えるなら、ユニコーンというよりはケンタウロスと言えるだろう。そして、この半獣のタイラーもまた、『The Love Below』のCDブックレットに掲載されたケンタウロス姿のアンドレを思い起こさせる。「Rella」は半獣の容姿だけでなく、あのストレートパーマの髪型も、「Hey Ya!」のアンドレを真似したのではないだろうか。


Hodgy, Domo Genesis And Tyler, The Creator - "Rella"

満たされない心
『Flower Boy』はタイラーの抱える「孤独」が前景化した作品であると書いた。それでは『The Love Below』はどうか。タイトルに並ぶ「Love」の文字を見るに、孤独とは無縁なのではないかとの声が聞こえてきそうだ。なるほど、たしかに『The Love Below』でアンドレは複数の女性との関係を歌っている。しかしそれは裏を返せば、このように言い換えることができよう。つまり、アンドレが複数の女性と関係を持つのは、一人の女性との関係が長続きしないからだ。さすがは「プレイヤー/遊び人」、その名に恥じぬ女たらしぶりである。
 胸騒ぎの腰つき*2に駆られるセクシーな女性と一夜限りのロマンスを積み重ねるうちに(「Spread」「Where Are My Panties」)、交際に発展する女性との運命的な出会いも果たすのだが(「Prototype」)、アンドレはあくまで気楽な付き合いを望んでおり、その先に待つ結婚となると荷が重い。「お義父さんに会うなんて勘弁してくれ、君にはキャデラックの助手席に座ってもらえれば満足さ/お義母さんに会うのもまっぴらごめんだね、ただ君をイカせたいんだ」と真剣な交際を拒むのであった(「Hey Ya!」)。
 クールな男たるもの、女に逆上せるなんてご法度だ。そんなプレイヤーの哲学に忠実なアンドレは、こうして出会いと別れを繰り返す。派手な女性関係の反面、一人の女性と真摯に向き合えない彼の姿は、孤独な存在に映る。イントロに続く実質的な一曲目である「Love Hater」では、「誰しも愛するひとが必要、手遅れになる前に(独りで孤独に老いさらばえたくないよな)」と、孤独への不安が歌われる。『The Love Below』は、そんな孤独なプレイヤーの愛の探求譚だ。しかし、ベッドを共にする相手は見つけられても、アルバムの締めくくりの言葉が示すように、結局アンドレは愛を見つけることができない("LOVE, not found")。

Outkast - "Hey Ya!"

『Flower Boy』も、アンドレのように、孤独を抱えたタイラーが愛を探す物語である。同作でタイラーは、マテリアリズム/物質主義のもたらす虚無や孤独を、車と運転のメタファーによって表現している(高級車を買い揃えたところで、助手席に誰も座るひとがいないのでは虚しいだけだよ!)。タイラーの隣の無人の助手席は、孤独な彼の心の空洞である。

 毎晩、美女を取っ替え引っ替え抱いても、または車庫に高級車をずらり並べても、二人の心は決して満たされない。

 また、『Flower Boy』に見られる新しい試みとして、タイラーのアルバム作品では初となるインスト曲「Enjoy Right Now, Today」が最後に収録されている*3。この楽曲構成は、アルバムの終盤に同じくインスト曲「My Favorite Things」を配置した『The Love Below』に倣ったものか。
 それぞれのインスト曲の直前に置かれた楽曲を比べてみると興味深い。タイラーの場合は、思いびとへの気持ちを留守番電話に託すも届かなかった後、一方のアンドレは、かつての恋人から届いた手紙を読み上げた後にインスト曲が続く流れになっている。それぞれ場面は違えど、どちらの作品においても、言葉にならないほろ苦い感情が、言葉に依らないインスト曲ならではの余情をもって表現されているように思う。


『Flower Boy』の制作過程において、タイラーがどこまで『The Love Below』を意識したかはわからない。もしかしたら、二作品は全く関係ないかもしれない。しかし、真偽のほどはともかく、『Flower Boy』と『The Love Below』、そしてタイラーとアンドレの間には共通点を見出だすことができる。逆に二人が異なる点を挙げるとすれば、それは人気者か否か(モテ、否モテ)ということになるだろうか。タイラーとアンドレのどちらが人気者であるかは、言うまでもないだろう。ただし、タイラーは人気者でなく陰気者だったからこそ、内向き思考の産物たる『Bastard』や『Goblin』のような怪作が生まれたのだともいえる。それに、タイラーもまったくモテないわけではない。「FUCKING YOUNG」では、年下の女性から熱烈な愛を向けられる。だが、タイラーは彼女が「若すぎる」という理由で、その愛をはねつける。もしも、アンドレがタイラーの立場だったら、いくら年が離れていようがお構いなしに彼女の愛に飛びつくであろうことは、アリーヤの有名曲を引いて、年齢なんて関係ないとばかりに年上女性に耽溺する「Pink & Blue」を聴くまでもなく、容易に察しがつくだろう。

*1:タイラーは「Stan」との関連を否定している
*2:I don't want to move too fast, but can't resist your sexy ass
*3:『Goblin』のボーナスディスクには、「Untitled 63」というジャズのインスト曲が収録されている。


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2017年8月1日火曜日

コモン『Finding Forever』発売10周年



 10年前の昨日(7月31日)はコモンの『Finding Forever』(07年)が発売された日。この作品は、タイラー・ザ・クリエイターにとっての『In Search Of...』と同じぐらい、僕にとって大事な一枚。イントロの美メロで引き込まれて、続く「Start the Show」の重低音に心を鷲掴みされた高3の夏。あの日以来、すっかりヒップホップの虜となり、今日に至る。

Common -"The People"



 

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