2017年6月24日土曜日

7 DAYS BOY!〜タイラー・ザ・クリエイターの新作予告



 Tyler, The Creator(タイラー・ザ・クリエイター)が、次なるプロジェクトの予告と思しき意味深な写真をツイッターに投稿した。そのプロジェクトが何であるかは明らかにされていない。わくわく。答えは七日後のお楽しみ。楽しみすぎて居ても立ってもいられないので、ここではそのプロジェクトの中身を予想してみる(こうしてあれこれと推測できるのは、タイラーが単なるラッパーの枠に収まらない多才な人物だからこそ。その名に恥じぬ、まさしく“クリエイター”である)。

①新曲および新作アルバムの発表
タイラーはデビュー作『Bastard』(09年)から二年に一枚ずつアルバムを発表している。今年は最新作『Cherry Bomb』(15年)発表から二年が経つので、順当に行けば年内に5thアルバムが届けられるはず。

②コンバースとのコラボスニーカー発売
最近、コンバースの見慣れないスニーカーを着用したタイラーの姿が目撃されている。噂では、昨年の「GOLF」ファッションショーでローンチが発表された、タイラーの新たな靴のブランドライン「Golf Le Fleur」とコンバースのコラボモデルではないかと言われている。今回投稿された写真に描かれているミツバチは、花のモチーフをあしらった「Golf Le Fleur」のことを示唆しているのかもしれない。



GOLF Fashion Show 2016

③『The Jellies!』『Nuts+Bolts』放映日の発表
タイラーの運営するコンテンツプラットフォーム「Golf Media」で配信中のアニメ『The Jellies』とドキュメンタリー『Nuts+Bolts』が、このたび米ケーブルTV局「アダルト・スイム」と「バイスランド」でそれぞれ放映されることが決まった。今回の予告は気になる放映開始日の発表か。『The Jellies!』のティザー動画を見る限り、クラゲ一家に養子として育たられた少年の話という大筋はGolf Media配信版と同じようだけど、声優や主人公の肌の色など変更点もある模様。Golf Mediaに有料登録して、コンテンツの成長を支えてくれた熱心なファンへの感謝も忘れないタイラーの律儀さに感心。これからも応援します。


Meet Cornell Jelly | The Jellies | Adult Swim


④「Camp Flog Gnaw Carnival 2017」出演アーティストの発表
今年で6回目の開催を迎えるタイラー主催の音楽フェス「Camp Flog Gnaw Carnival」。今年はLil Yachty(リル・ヨッティ)、Frank Ocean(フランク・オーシャン)、Brockhampton(ブロックハンプトン)、Jay-Z(ジェイ・Z)の出演に期待。

⑤『Wolf』映像化作品の発表
現段階で予告トレーラーだけ公開されている、3rdアルバム『Wolf』(13年)の映像化作品。ついに観られるか。


WOLF : Official Movie Trailer

⑥『The OF Tape Vol.3』の発表
bumping oldies on my cellular phone...


Odd Future - "Oldie"

⑦コラボアルバムの発表
アール・スウェットシャツ、エイサップ・ロッキー、トロ・イ・モア、マック・デマルコ、ファレル、エミネムとのコラボ作が聴きたい!



2017年6月18日日曜日

T'S PLAYLIST



 Tyler, The Creator(タイラー・ザ・クリエイター)がSNSやインタビューなどで言及したお気に入りの楽曲を集めたSpotifyのプレイリスト「T'S PLAYLIST」。以前取り上げたこちらのプレイリストと比べても桁違いの網羅性を誇る、400曲、30時間超の決定版。



2017年6月11日日曜日

J・コールの優劣を決す



 万人が納得するランキングなんて無理。その通りかもしれない。音楽アルバムであれば売り上げ枚数、映画であれば観客動員数など、客観的な判断基準に従って選ぶのでない限り、そのランキングが選者の趣味嗜好を反映したものになるのは仕方のないこと。良い、悪い、好き、嫌いはひとそれぞれ。ランキングに対して不満が聞かれるのも不思議なことではない。それでも、選者の独断と偏見で選んでいるにも関わらず、それなりの説得力と正当性を持ったランキングというのもある。『ラップ・イヤー・ブック』(17年、シェイ・セラーノ著、小林雅明訳、以下RYB)がそれだ。『RYB』は、世界初の商業ラップレコードである「The Rapper's Delight」が発売された1979年を始点に、2014年までの三十六年間それぞれの年の最重要曲を選出した“ラップの年鑑”だ。最重要曲を勝手に決めてしまうとは、たいへんに大胆な試みであり、それこそ下手すれば、ラップミュージックのうるさ型リスナーから大反感を買いそうなものだが、完璧とは言わないまでも、『RYB』の選ぶ三十六の重要曲と、この本が提示するラップ史観には頷かされる。『RYB』が独断と偏見による歪んだランキングに陥ることなく、説得力に足るものとなりえたのは、個人の好き嫌いだけで選ぶのではなく、選曲に際して評価軸を設けているため。著者のシェイ・セラーノは、この本で採用した評価基準をこう説明する:
“最重要”とは、必ずしも“ベスト”を意味しないし、“ベスト”は、必ずしも“最重要”を意味しない。(中略)カニエ・ウエストのJesus Walksは、2004年のベスト・ソングではあるが、最重要ではない。曲そのものが成功した以外、(全く)何も功績を残していない。1997年において、パフィのCan’t Nobody Hold Me Downは、ビギーのHypnotizeに比べたら良い曲ではないけれど、ずっと重要な曲だ。その違いは、意味論上のもののようだし、そうなのかもしれないが、こう考えてみればわかりやすい:その曲がラップ界に、もしくは、ラップ界の外側にまで、いかなるインパクトを与えたのか? そうすると、たいてい、重要曲と、楽しむために身体や手や足を動かせる曲との違いを判別できる。
『RYB』は、先ずもって、一年に一曲選ぶという、その基本的な構成がユニークであるが、それに加えて、著者の皮肉に満ちた語り口が輪をかけてこの本をユニークなものにしている。例えば、「ザ・ネプチューンズは、過去15年間で最も影響力のあるプロダクション・チームではないだろうか」という一文に付された脚注は「おっと、どうした、ティンバランド」といった具合だ。皮肉な物言いにニヤリとさせられるのだが、J. Cole(J・コール)のことを腐した箇所だけが読んでいて気になった。何の説明もなく、ただ「ラッパーとしてたいした事ない」とほのめかされているのだ。

『RYB』に限らず、著者シェイ・セラーノの発言や彼が書いた文章には、J・コール批判が散見される。Kendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)を賞賛するのに、わざわざこう述べている「ケンドリック・ラマーの音楽とは、J・コールが作っていると思い込んでいる種類のものである」。言い回しの回りくどさが、余計に嫌味ったらしい! しかし、さすがは『RYB』という優れた本を上梓したシェイ・セラーノだけあり、J・コールのことが憎いがために、理由もなくこき下ろしているわけではない。彼のJ・コール批判には、彼なりの根拠がある。

「The Ringer」に掲載された「The Great J. Cole Debate」という記事は、J・コール擁護派と反対派の二人のライターによる討論。例によってシェイ・セラーノは反対派として、得意の皮肉交じりに批判を展開している。この討論が一読に値すると思うのは、『RYB』同様に、やみくもに良い悪いを言い争うのでなく、評価基準を定めた上で、対象の優劣を論じているところだ。ここでは五つの評価カテゴリーを設定し、それぞれ0点から20点で採点を行うという方式を採っている。五つの評価カテゴリーは以下の通り、①性格:その人物はどんな人か? そのラッパーを“人として”好きか、リスペクトできるか? ②親近感:あなたの希望、課題、関心について、そのラッパーは何と言っているか? ③差異:そのラッパーの音楽は、良くも悪くもその他のラッパーの作品からかけ離れているか? ④熟練:この点が、ジュエルズ・サンタナやリル・ヨッティのような、シリアルの箱の裏面に書かれた原材料名について、目を細めて注意深くラップするラッパーが低く評価される所以である。⑤目的:その人物は立派な目的のためにラップしているか? この点はカニエ・ウェストみたいに、高校で人気がなくて、体育会系男子やイケてる女子とつるめなかったことへの腹いせにラップしているかのような人物が、最底辺に位置付けられる所以である。

 各カテゴリーについて優劣を論じ合い、最後に反対派のシェイ・セラーノはこう問うている「それでは採点を集計しよう。我々が採用した“この人物は優れたラッパーか?”基準に従えば、J・コール反対派の私は100点満点で33点を付けた。対して、J・コール擁護派の(そして、この採点基準を考案した張本人の)あなたは58点。58点という得点は、私の場合は、決して“優”の部類には入らない。さて、これが私からあなたへの最後の質問だ。J・コールは優れたラッパーでないと認める気になっただろうか?」ここでは詳細を省くが、公正な議論の結果、上述の通り、J・コールの優劣をめぐる討論は、擁護派と反対派の双方が納得のいく形で幕を閉じている。

 この討論でシェイ・セラーノは、J・コールがshit(うんこ)を使ったパンチラインを多用していることをからかって、すべての発言の最後をそれらで締めくくるという妙技を披露していて、やはり皮肉ったらしいのであった(「野郎どもは一端の大物気取り、でもまだ屁すらこけてねえ」等)。そういえば、Logic(ロジック)の『Everybody』(17年)では、ラップ論壇から不当な批判を受け苦しむロジックに向けて、J・コールが先輩ラッパーとして「他人の意見は気にするな」というアドバイスを授けているのだけど、これだけ憎々しい批判に晒されては、そう言いたくなる気持ちも理解できるというもの。


Logic - "AfricAryaN (feat. Neil DeGrasse Tyson)"



2017年5月28日日曜日

ロジック「America」とJ・コール「False Prophets」



 Logic(ロジック)が『Everybody』(17年)にシークレットゲストとして参加しているJ. Cole(J・コール)について、オタク愛丸出しで饒舌に語るこのインタビュー動画からは、J・コールへの敬愛ぶりがひしひしと伝わってくる。ロジック曰く「俺はあなた(J・コール)の言葉に従って生まれた産物」。「America」という曲でロジックは、同じく敬愛する先輩格ラッパーのKanye West(カニエ・ウェスト)のご乱心に対して、「ジョージ・ブッシュは黒人のことを考えていない」とカニエのブッシュ批判を引用したのを口火に、「2017年、ドナルド・トランプがその後釜/カニエが黙っているから俺が言う/目を覚ませ、みんなの声に答えてくれよ/好きだからこそ言うけど、俺たちは困惑している/あなたの音楽は2020年レベル、でも政治を見る目は曇ってる/名前を傷つけるつもりはない/あなたのすべてに心酔しているから」と愛憎入り混じる批判を展開している。これはもしかしたら、J・コールの「False Prophets」という、同じく尊敬していたカニエへの落胆を辛辣に綴った曲に想を得たというか、この曲の存在が、憧れのカニエに苦言を呈すことに少なからず躊躇いを覚えただろうロジックの背中を押したのかもしれない、と思った。

 ロジックやJ・コールがそうしたように、神のように崇拝する人物に対しても、間違っていると思えば批判の目を向けるのが健全というもの。批判されているカニエも「Power」という曲のなかでは、権力の集中はよくない、と言っている。でもその一方で、スーパーヒーローに欠かせないテーマ曲が俺の場合はへイターの喚き声、と吹聴しているので、せっかくロジックたちが勇気を出してあげた声が、カニエに灸を据えることになるかは甚だ疑問である。あと余談だけど、「False Prophets」を聴いて、『バットマン vs スーパーマン』のスーパーマン像に書かれた「false god」という落書きを連想した。果たしてイーザスは偽の神か。





Logic - "America (feat. Black Thought, Chuck D, Big Lenbo & NO I.D.)"

J. Cole - "False Prophets"

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2017年5月27日土曜日

RAP NASTY〜『映画と残酷』とタイラー・ザ・クリエイター



 ナマニク『映画と残酷』読了。面白かった!「俺たちの観たい映画を好き勝手にブッタ切ったり、ボカシたりしやがって、けしからん!」という文句に終始することなく、映画の残酷描写が規制されてきた歴史と問題点を、客観的な立場から検証していて、たいへん興味深く読んだ。映倫と聞くと、良識派ぶった顔をして作品の鑑賞を制限する、忌むべき存在という印象を漠然と抱いていたのだけど、本書の記述を読むと、国家による検閲を避けるための自主規制機関という、法規制に対する緩衝材としての役割を担っていた事実がわかる。よく知りもしないのに思い込みで「悪」と決めつける態度は、それこそ本編を観ていないのに、見出しや伝聞だけで残酷映画を不快だとして糾弾する連中と同じわけで、反省。

 第4章「地獄のビデオ・ナスティ 世界最悪の検閲」では、イギリスで行われた法規制の事例が紹介されている。猥褻の烙印が押された映画のビデオソフトが発売禁止の憂き目に逢っているという話を読んで、歌詞の内容が暴力的だという理由からイギリスへの入国禁止措置を受けたTyler, The Creator(タイラー・ザ・クリエイター)のことを思い出した。前に書いたように、この措置は断じて不当。イギリス政府によるタイラーへの処遇には今でも腹が立つ。しかし、残酷映画をめぐる同国の一連の騒動と対応を知って、もともとそういうお国柄なのかもと腑に落ちたところもあった。本のなかで、映像審査機構のスポークスマンによる『悪魔のいけにえ』(74年)公開時の発言「私たちのような学のある富裕層が観るぶんには問題がないが、アホな労働者階級の連中が観たら刺激が強すぎて暴動になるかもしれん!」や、1751年制定の「治安紊乱に関する法律」の文面「下層の人々のために娯楽の場が広がることは、さらなる窃盗や強盗を引き起こすことになる、なぜなら、貧乏人は娯楽のための金を手に入れようと不当な手段に訴えようとするからだ」が引用されているけど、イギリスの暴力表現に対する風当たりの強さは、階級社会(におけるエスタブリッシュメント層の差別意識)という国柄も影響しているのかもしれない。とはいえ、タイラーが入国禁止措置を受けたのは2015年だぜ。もう少し進歩的に考えられないものだろうか。最後に、『映画と残酷』の一節を借りて、タイラーを締め出したイギリスに対して再度問いたい、“今日『Bastard』を聴いて、プロムの誘いを断った女の子を拉致、レイプしたあげく食人行為におよぶヤツがいるのだろうか? もしかしたらいるかもしれないが、果たしてそのすべての原因は『Bastard』であると言えるのだろうか?”


Tyler, The Creator - "VCR"


Tyler, The Creator - "Sarah"

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