2017年2月25日土曜日

サーベイビー『SANDAS』



 作品中のそこここでチンコを咥えているのは当然で、ミックステープ『SANDAS』(16年)は、'Suck A Nigga Dick Ah Something'の略だという。ジャケット写真でSahBabii(サーベイビー)がニンマリ顔なのは、下腹部に顔を寄せる女性がこれから'してくれる'からなのだろう。チンコと同じぐらい銃描写も目立ち、それも男根と銃を混同させている節がしばしば見受けられる。半自動式銃のマガジンがチンコにすり替わっていたり(King of the Jungle)、はたまた、女性がサーベイビーのチンコだと思って弄んでいたものが銃のマガジンだったりする。こうなると「Pull Up Wit Ah Stick」も、手にしているのが実は銃ではなく別のスティック(棒)なのではと勘ぐってしまうのである。


SahBabii - "Pull Up Wit Ah Stick"

タイラー・ザ・クリエイターは同性愛差別主義者に非ず、再び



 またかよ。もうこれで何度目だろうか。Frank Ocean(フランク・オーシャン)の父カルヴァン・コックジーが息子に対して起こした名誉毀損訴訟のなかで、Tyler, The Creator(タイラー・ザ・クリエイター)のことが「悪魔崇拝者」呼ばわりされ批難されている。この訴訟は、2016年に起きたオーランドのナイトクラブ銃乱射事件を受けてフランクがタンブラーに投稿した文章の内容をめぐるもの。問題とされる文章のなかでフランクは、子どもの頃に父カルヴァンと外食に出かけたときのことを回想し、父がトランスジェンダーの女性店員を「ファゴット」「汚らわしい」と呼んだとして批難しているが、父カルヴァンはそれは事実無根であり、自身の音楽、映画産業における将来にわたる経済的機会を損ねるものだとし、1,450万ドルを請求している。要するに、倅に書かれた悪評のせいで食いっぱぐれたから弁償しろと主張しているのだ。フランクの父は、フランクの書いた文章の信頼性を疑問視するために、タイラー・ザ・クリエイターを不当に利用しようとしている。その主張を要約すると以下の通り「フランク・オーシャンがタイラー・ザ・クリエイターについて文章中で言及していないのには理由がある。フランクは、『Blonde』の共作者であるタイラーが歌詞の内容が同性愛嫌悪的、忌まわしいという理由からイギリスとオーストラリアへの入国を禁止されていることを知りながら、意図的に言及するのを避けている。フランクはLGBTコミュニティへの憎しみを表明するタイラーとの関係を隠蔽することで、LGBTのファンからの支持を保ち、『Blonde』の経済的成功を担保しようとした偽善者である。タイラーは悪魔崇拝者」。言いがかりも甚だしい。何度も書いたけど、タイラー・ザ・クリエイターは同性愛嫌悪ではない。「Rusty」を聞いてください。このようなタイラーへの不当な批判には、これからも断固として抗議していく所存である。


 一方、タイラー・ザ・クリエイターに対するまっとうな批判もある。ロクサーヌ・ゲイは著書『バッド・フェミニスト』のなかで、タイラーの言葉遣いを問題視する。「三つのカミングアウトの物語について」と題された章でロクサーヌは、フランク・オーシャンのカミングアウトを賞賛したうえで、オッド・フューチャーの仲間であるタイラーの『Goblin』(11年)が213のゲイ罵倒語を含むとして、痛烈に批判している「タイラー・ザ・クリエイターは、自分にはゲイの友達がいるというあの古くさいごまかしでもって、自分は同性愛嫌悪でないと主張し続けている。加えて彼は自分を弁護するにあたって、曲で「ファゴット」という言葉を何度も何度も何度も使用していることを自分のゲイのファンたちはまったく気にしていないと主張している—連帯免責だ。(中略)前に一歩進むたびに、進歩を引き戻すクソ野郎がいるものだ」。クソ野郎呼ばわりされて悔しいが、「Rusty」におけるタイラーの反論(フランクと何度も共演しているんだから、同性愛嫌悪であるわけがない)を論破していて、言い返したくてもぐうの音も出ない。ゲイ罵倒語を使うのが良くないことだというのは、全くもって正しい。しかし本人が主張するように、タイラーは決して同性愛嫌悪なんかではないし、誰かの性的指向を指してゲイ罵倒語を使っているのではない、ということは理解してもらいたい。それは作品を聴けば分かるはず。タイラーはゲイ罵倒語を馬鹿や間抜けぐらいの意味で使っているのであって、それこそロクサーヌが本のなかで「ジェイZみたいなラッパーは「ビッチ」という言葉をまるで句読点みたいに使」うと書いているような、ラッパー語法とでも呼ぶべき用法のひとつだと思っている。タイラーのことを同性愛嫌悪と見なすわからず屋のために、例を挙げて説明するとしたら、つまりこういうこと「タイラーはホモフォビアじゃないし、このカマ野郎」。



2017年2月5日日曜日

ミーク・ミルズはどのような人物で、Lって何のこと、また何故ミークはLばかりなの?



 Big Sean(ビッグ・ショーン)の「Bounce Back」『I Decided』(17年)所収)のサビで歌われる「Last night took an L, but tonight I bounce back」という言い回しの「L(読み:エル)」って何だろうと思い調べてヒットしたインターネット掲示板Redditのスレッド「Who is Meek Mills, what are ''L's'', and why is he taking so many of them?」が非常にわかりやすくて、面白かった。まず、Meek Mill(ミーク・ミル)の名前を間違えているスレッドのタイトルからして愉快。「L」というのは、「loss(損失)」の略のことらしい。「昨夜しくじっちまったから、今夜は挽回すんぜ」。以下、ベストアンサーに選ばれている回答の拙訳なり。

ミーク・ミルはラッパーであり、ニッキー・ミナージュと恋愛関係にあることでも知られる。
“L's”とはLosses(註:損失)のことで、Lをとった、というのはヘマをしてそれに甘んじることである。
ミーク・ミルはほかのラッパーたちとビーフを始めることで悪名高く、最もよく知られているのはドレイクとのビーフである。ミークはドレイクがゴーストライターを起用しているとして責め、対してドレイクは二曲のディス曲で応戦した。その間、ミークは一曲も発表できなかった。ドレイクはミークの面目を完全に失わせ、ミークはお笑い草扱いされている。にもかかわらず、ミークは最近になって50セントとのビーフを開戦したのだが、インスタグラム上で50セントにボロカスに言われ、またしても恥をかかされたのだった。ミークはまだ何もやり返せていない。
要約すれば:ミーク・ミルとはラッパーであり、自分の手に負えない分不相応のことを始めてしまう人物である。彼がLばかりなのはそのためである。


Drake performs Charged Up and Back to Back for the first time at OVO. RIP Meek Mill.


Big Sean - "Bounce Back"



2017年2月4日土曜日

ポスト・テキスト・ラッパー



 Lil Uzi Vert(リル・ウージー・ヴァート)がひたすら「ヤー、ヤー、ヤー」言ってるだけのこのビデオは、『ラップ・イヤー・ブック』が指摘するところの「ポスト・テキスト・ラッパー」時代を象徴しているように思う。オリジナルの「Bad and Boujee」と比べてみても、聴了感はそれほど変わらないし。
“彼は鋭く甲高い声を出したり、もごもご言ったり、言葉を取り上げ、そこからあらゆる意味を剥ぎ取ったりして、言葉を単なる音にして、フロアに撒き散らす事までする。想像してほしい、自分自身の幸せをハグできるか。想像してみてほしい、座って、両足を温い泥のたくさん入ったバケツに突っこんで、つま先を動かしてみる。泥は泥にすぎず、足で感じているのは自分の生気だ。それがヤング・サグのラップだ。彼は恐らく初のポスト・テキスト・ラッパーなのでは、実際に言葉を必要としてさえいないのだから。”
ーーー『ラップ・イヤー・ブック』
 

Migos - Bad and Boujee but it's only Lil Uzi Vert saying YAH YAH YAH the whole song

長谷川町蔵『あたしたちの未来はきっと』



『あたしたちの未来はきっと』読了。すごい面白かった! 長谷川町蔵さんが造詣の深い〈学園モノ〉アンソロジーかと思いきや、まさかのSF展開に驚いた。話は全然違うけど、ブリット・マーリング主演のドラマ『The OA』を想起しました。ある悲劇を食い止めるため奮闘する少女とその仲間たちの物語。





 

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