2017年12月15日金曜日

ダックワース「I'm Dead」



 できることならロジックを見習って、いつでも心に平穏と愛を忘れず前向きに生きていきたい。Peace, love and positivity! でも言うは易く行うは難し(ゆえにロジックは偉大なのである)。普通に生活していれば、shitやdamnなどの罵り言葉が口をつく場面に出くわすこともある。そういうときはダックワースの「I'm Dead」を歌えばいい。理不尽な目にあったら、死んでやり過ごせばいいんだという発想がなんとも豪快。髑髏の絵文字を添えて申告される死亡宣言は不服と無関心の表明だ("Skull emoji ni*** I'm dead")。死んでるから知ったこっちゃないし、どうでもいいし("whatever, whatever , whatever")、そんなくだらないことよりほかにやることがあるんだよ、といった具合に。本来、ネガティヴな意味を持つ「死」をポジティヴに読み替えてみせるわざは、同じように元々はコカインのことを指す「base」という言葉の意味をポジティヴに反転させて(というよりハイの概念を突き詰めて?)超ポジティヴ=ベイストの概念を提唱するリル・B “ザ・ベイスト・ゴッド”を連想させる。ネガティヴな言葉の意味の読み替えはアルバムタイトル『I’m Uugly』(16年)でも見られる。醜さや欠点も含めたありのままの自分をさらけ出して受け入れようというのが収録曲「Get Uugly」のメッセージだ。歌詞の中に出てくるコーンロウ、ブレイズ、厚ぼったい唇などの表現から考えて、この曲でダックワースが「きみは美しい」と歌いかけている相手は黒人だと思われる。インタビューでダックワースは本作におけるuglyのコンセプトについてこう話している「有色人種は美の観点からは遠い存在だと思われてる。俺たちはいつだって二の次。この作品ではそういった人たちに自分たちだって美しいんだってことを伝えたい」。黒人の美というと、またしてもリル・Bの「No Black Person Is Ugly」という曲が思い出される。クソ野郎のたわごとに対してはアイム・デッド、そしていつでも心はベイストで。


Duckwrth - "I'm Dead"


Duckwrth - "Get Uugly"

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2017年12月3日日曜日

2006年の夏〜タイラー・ザ・クリエイター「November」



「くっそ、11月が終わった」。12月。今年も残るところあと1ヶ月。「November」は不安や疑心暗鬼に駆られ落ち込むタイラー・ザ・クリエイターが、過去の記憶に思いをめぐらせる一曲。暦の11月を意味する「ノーベンバー」がこの曲では「最高の思い出」みたいな意味で使われている。タイラーのノーベンバーは「2006年の夏」。ラップ・ジーニアスにも書いてないけど、これはたぶん敬愛するファレルの『In My Mind』(06年)のことだと思う。そういえば、『ストレンジャー・シングス』シーズン2の第8話で、マインド・フレイヤーに乗っ取られたウィルを呼び覚まそうと、母ジョイスたちが思い出を語りかけるシーンがとても「November」っぽい。
 

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タイラー・ザ・クリエイター『Flower Boy』がグラミー賞にノミネート



 タイラー・ザ・クリエイターの『Flower Boy』(17年)が第60回グラミー賞の〈最優秀ラップ・アルバム部門〉にノミネート! もちろんタイラーにとっては今回が念願の初グラミー候補入りだ。「俺は“変わり者”だったから」というコメントと一緒に、愛車のカーラジオから流れる「See U Again」を聴いて歓喜していたように、これまでタイラーの曲がラジオでプレイされることはなかった(多少おおげさに言ってると思うけど)。「November」のなかでも、異端であることへの不安を口にしていた(“俺の音楽ってやっぱり変わってるのかな”)。それでも決して大衆向けには妥協せず、信念を貫き通して、ほかの誰にも作ることのできない唯一無二の作品で見事グラミーノミネートを果たしたタイラーに最大級の賛辞とリスペクトを送りたい。おめでとう、タイラー!
http://hooolden-caulfieeeld.tumblr.com/post/166128681358

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2017年11月23日木曜日

カニエ・ウェスト「Welcome to Heartbreak」



「Welcome to Heartbreak」の冒頭、友だちから子どもの写真を見せられるカニエ・ウェスト。対して未婚のカニエが見せることのできるのは、趣味のいい調度品で飾られた大きな自宅の写真だけ。カニエの複雑な気持ちをよそに友だちはつづけて、さいきん娘が受け取ったという成績表について嬉しそうにべらべらと話している。独り身のカニエがさいきん手にしたものといえば、高級スポーツカーぐらいのもの。ああ、幸せってなんだろう。このときのカニエはきっと、彼がときおり見せるあの死んだ目をしていたことだろう。

 最愛の母ドンダを亡くし、フィアンセとの婚約も解消。そんな失意のなかリリースした『808s & Heartbreak』(08年)のフィーリングを提示する歌いだしとして、これほどうまいやり方がほかにあっただろうか。いま『808s』を聴きかえすと、この冒頭部分がタイラー・ザ・クリエイターの『Flower Boy』(17年)を連想させる。『Flower Boy』のボーナストラックといってもよい「Ziploc」という曲で歌うタイラーは、あのときのカニエの気持ちを代弁しているかのよう。「朝起きて独りぼっちなら、カネなんて紙切れ同然」、「誰も待っていない家に帰っても仕方ない」。タイラーもいまは孤独だけど、カニエみたいにゆくゆくはすてきな家庭*1を持てたらいいね。

Kanye West - "Welcome to Heartbreak"


Tyler, The Creator - "Ziploc"

*1:ドンダを美容整形外科手術で亡くしたのに、プラスチックサージェリーの見本みたいなキムを妻に迎えたカニエ。Show me somethin' natural like ass with some stretch marksとは、ケンドリック・ラマーの言葉。

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2017年11月19日日曜日

タイラー・ザ・クリエイター『The Jellies』第3話「Pilot」



 Golf Mediaで配信されていたタイラー・ザ・クリエイター製作のカートゥーン・アニメーション『The Jellies』が、米ケーブルテレビ局アダルトスイムでの放送を開始した。クラゲの一家に養子として迎えられた主人公コーネルとその仲間たちの破茶滅茶な日常を描くという大筋のストーリーはGolf Media版と同じ。大きく異なるのはコーネルの肌の色。Golf Media版では白人という設定だったのが、アダルトスイム版は黒人に変更されている。

 サンディエゴのコミコン会場で開催された番組のパネルディスカッションにて、ファンから設定変更の理由について質問を受けたタイラーはこう答えている

「なんでブラックにしたかって? どうして黒人じゃだめなわけ? いまテレビでやってるアニメのなかに何人の黒人キャラがいると思う? 時間をあげるから、5人名前を挙げてごらんよ。いないんだよ、ひとりも。だから俺たちは黒人にしたの。俺たちがテレビでやろうとしてるのは銃も持ってなければ、バスケもしない、ドジな黒人キャラ。おまけにそいつは主人公。道化役でもなければ、取り巻きでもなく、正真正銘の黒人主人公なんだ」

 ステレオタイプの黒人キャラ像に反する『The Jellies』のこうした設定には、当のタイラーの性格が反映されているのだろう。Golf Media配信版と変わらず、緑のキャップをかぶり、細面でひょろ長い背格好のコーネルはタイラーそっくりである。肌の色以外にも、第3話「Pilot」は養子のコーネルが生みの親を探すという、『Wolf』3部作でみられた「父の不在」というタイラーの作家性があらわれたエピソードになっている。


SDCC Exclusive: Tyler, the Creator + The Jellies! | The Jellies | Adult Swim

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2017年11月12日日曜日

タイラー・ザ・クリエイター「CAMP FLOG GNAW CARNIVAL 2017」



タイラー・ザ・クリエイター主催の音楽フェス「キャンプ・フログ・ノー・カーニバル」に参加するため、今年もロサンゼルスに行ってきた!

「キャンプ・フログ・ノー・カーニバル」は音楽オタクのタイラーがいちリスナーとして見たいと思うミュージシャンを招聘する野外音楽フェス。会場はタイラーの地元ロサンゼルスのエクスポジション公園。5周年を迎えた昨年からは規模を拡大して2日間開催されている。最新作『Flower Boy』(17年)を発表したタイラーを筆頭に、同じく今年新作アルバムをリリースしたリル・ヨッティ、ミーゴス、ブロックハンプトンなど旬のラッパーたちから、大御所ロイ・エアーズまで、さらに昨年に引きつづきエイサップ・ロッキーが『Cozy Tapes Vol. 2: Too Cozy』(17年)をひっさげて参加。そしてヘッドライナーにラナ・デル・レイとキッド・カディという超豪華な顔ぶれが勢ぞろい。出演ラインナップの発表を受けて、2度目の参加を即座に決めたのだけど、とりわけ決め手になったのはソランジュの出演。『A Seat At the Table』(16年)は発売から1年が経ついまもよく聴くし、ライヴのレポート記事を読んで以来、これは行かねば!と思っていたのでした。

まずはフェスのチケットを購入。列に並ばずに優先入場できたり、ステージ前の特等エリアで観られたり、おまけマーチャンダイズがもらえたりと特典が盛りだくさんのVIPチケットを入手したかったのだけど、残念ながら瞬殺で売り切れて買えず。一般チケットを購入した。去年は購入後にメールで送られてくるバーコード付きのPDFを印刷したものがチケット代わりだったけど、今年のチケットはリストバンド!

さらに今年は専用アプリが新たに導入!
出演者のプロフィールやタイムテーブル、会場へのアクセスなどお役立ち情報が見られるほか、事前にお気に入りアーティストを登録しておくと、出演15分前にプッシュ通知で知らせてくれるという便利な機能付き。会場にはメインの「Campステージ」と一回り小さい「Flogステージ」があって、お目当のアクトをすべて見るためには、ときに分刻みのスケジュールでステージ間を移動する必要があるのだけど、時間を忘れてパフォーマンスに釘付けになってしまうこともしばしば。だからこの機能はすごく役立った。実際に当日会場では、スマホに届いた通知を見た人たちが観衆から離脱してぞろぞろと別ステージへ移動する姿がよく見られた。

チケットにつづいては、航空券の手配。スカイスキャナーで滞在日程と予算にあう便を探す。長時間フライトは映画をたくさん見ることのできる楽しみな時間であるのだけど、窮屈な座席に押し込められて足腰とお尻が痛いのが難点。そこで今回はプチ贅沢をして、エコノミークラスのハーフランク上、プレミアムエコノミーで席を予約してみた。利用したデルタ航空では、コンフォートプラスというサービス名称がそれにあたる。エコノミークラスよりも座席の間隔が最大4インチ:約10cm広く、わずかな違いのようだけど、かなり快適にすごせた。いつかはビジネスクラスで旅行してみたいなあとほのかな野望を胸に、エイサップ・モブの「FYBR (First Year Being Rich)」を脳内再生(ロッキーのステージで観られるかな。わくわく)。


搭乗券も今回は初めてiPhoneのWalletアプリを利用して、ペーパーレスでスマートに搭乗。帰国の便で搭乗ゲートが急遽変更になったのだけど、デルタ航空の専用アプリはフライトの変更情報も知らせてくれてたいへん便利。

日本時間10月27日(金)15時15分羽田発の便でロサンゼルスに向けて出発。機内ではM・ナイト・シャマランの『スプリット』(17年)を劇場鑑賞以来の再見。多重人格者とカウンセラーという登場人物がタイラーとドクター・TCを想起させる。ラストシーンの台詞「The broken are the more evolved. Rejoice!」で泣く。

太平洋時間10月27日(金)9時ちょうどにロサンゼルス国際空港に到着。暑い。夏に逆戻り。この日のTシャツは、CLUB 75のお気に入りのピノキオT。
入国審査と税関を抜ける。宿に向かうため、UBERで車を呼ぶ。やってきたドライバーがめちゃウェッサイなギャングスタ・ドライバーだった! 耳がちぎれるんじゃないかってぐらいの爆音を車内に響かせながら、今回宿をとったロサンゼルス北東の街、ハイランド・パークへ向けてフリーウェイを疾走。
宿に到着。今回もAirbnbで予約した。ホストのTyrrellと対面。映画制作を仕事にしているという彼女は、快活でとても素敵な人だった。名前の発音は「pronounced Carol with a "T"」らしいので、カナ表記するならタャロルかな。彼女は猫好きで、家にはそれぞれ茶、灰、白の毛色をした3匹の猫が同居していた。羽田空港でおみやげに買った猫顔のお菓子を渡したらとても喜んでくれた。

宿のあるハイランド・パークはダウンタウンから車で15分ほどの距離に位置するLA郊外の街。静かで通りを歩く人も少なく、観光地という雰囲気ではないけれど、街のメインストリートには、若者たちの集うおしゃれなカフェやドーナツ店、ヴィーガン・レストラン、レコードストア、さらにレコードストアと床屋が一緒になったお店(!)、クラフトビールのブリュワリーなどが軒を連ねるヒップなエリアだった。ハイランド・パークというその名前からしてクール! 現在ではすっかり観光地化したニューヨークのブルックリンも、昔はたぶんこんな雰囲気だったのではないかと勝手に想像。

キャンプ・フログ・ノーは明日から開幕。部屋でしばらく休んで、この日は本家ディスニーランドがあることで知られる隣の都市アナハイムに移動して、ジェイ・Zの「4:44ツアー」初日公演へ!

会場はホンダ・センターという大きなアリーナ。熱気ムンムンのなか、意気揚々と入場しようとするも入り口で係員に呼び止められてしまう。何事かと思いきや、バッグパックを背負ってるのがまずかったらしく、クロークに立ち寄り荷物を預けて無事入場。

座席に着いてみてびっくり、ステージが超近い! まさに目と鼻の先だ!
夢にまで見た初めてのアリーナ会場でのラップコンサートを目前に、期待は高まるばかり。

まずは前座でヴィック・メンサが登場。これまた驚いたのだけど、まだ客席がガラガラ状態のなか、アナウンスも何もなく、いきなり出てきて、いきなり演奏が始まった。ところが始まってしばらくしても客席が埋まる気配はまったく見られないし、席に着いている人も雑談を続けている。もちろん真剣に耳を傾けている人もいるにはいるけど少数。ヴィック・メンサでもこれとは、アメリカのショービジネス界の厳しさを思い知らされる一幕だった。

その後会場が暗転して、いよいよジェイ・Zのステージに突入!
ステージ上空には2枚の長方形パネルが羽根のように組み合わせされた巨大スクリーンが計4台設置されていて、これがパフォーマンスにあわせて移動する仕組みになっていた。最初はそのスクリーンに過去のさまざまな映像素材をマッシュアップした動画が映され、観客の気持ちを高ぶらせる。ドキドキしすぎて心臓が破裂しそうだ。

そしてその瞬間がやってきた。
4台のスクリーンによって覆い隠されていたステージが、煙幕を吹きあげながらゆっくりと上昇していき......ジャジャーン! ホヴァ降臨! 会場にどよめきと歓声が沸き起こる。オープニング曲は『4:44』(17年)から「Kill Jay-Z」。やばい!
間髪入れず「No Church In the Wild」〜「Heart of the City」と続き、

その後も「Run This Town」、「Dirt Off Your Shoulder」、「99 Problems」、「Big Pimpin'」などなど(名前を挙げたらきりがない!)、ヒット曲のオンパレードで興奮っしぱなし。これだけは絶対外せないと心に決めていた「The Story of O.J.」の「ダンボ」もシンガロングできたし、このブログの名前の由来でもある「Nig*** In Paris」も見れた! That sh*t cray!
深夜1時ごろ宿に戻って、シャワーを浴びて、即就寝。クタクタに疲れていたけど、ジェイ・Zを目撃した興奮から冷めやらず、しばらく寝付けなかった。

ジェイ・Zのあの堂々たる立ち振る舞いには、なんというか「気品」を感じた。たとえるなら、しなやかな筋肉を躍動させて走る一流競走馬の優雅さ(もちろんレースは優勝しまくりで超稼いでいる)。将来、馬主になることがあったらカーターと命名しようと思う。「The Story of O.J.」で若手ラッパーにむけられた「ストリップクラブでカネを巻くより大事なことを教えてやるよ」というラインには、老婆心ご苦労さまなんて思っていたけど、そんなことはないと思い直した。サウス〜トラップ〜マンブルの実のないラップにはとうてい太刀打ちできない、圧倒的強度を誇る言行一致のボースティングにしびれた一夜でした。
ビルボードの記事によれば、今回の「4:44」ツアーはまだ始まったばかりだというのに、すでにジェイ・Zのライブツアー史上最高収益をあげているらしい。ステージ近くのよい席の価格をこれまでより高く設定して、逆にステージから遠い席の価格を下げるという価格戦略によって、ダフ屋が儲ける余地をなくし、その結果集客アップに成功したと分析している。またチケット価格だけでなく、ステージを中央に設置したことで、どの座席からも見やすいという会場設計も奏功したと書いている。たしかに僕が行ったアナハイム公演も上階の席までお客さんがたくさん入っていた。

会場でもらったTidalの6ヶ月無料トライアルカード!(日本に帰ってさっそく試してみたけど、日本からだと使えないみたい......)

ロサンゼルス滞在2日目。天気は快晴。絶好のフェス日和だ。朝の9時ごろまでぐっすり寝た。お腹がペコペコ。まずはブランチを食べにハイランド・パークのメインストリート「Figueroa Street」に出かけた。ホストのタャロルに教えてもらったヴィーガン料理を提供する「Kitchen Mouse」に行ってみた。

店内は白を基調にパステルカラーのグリーンとピンクが映える、とても居心地のよい空間だった。地元の人たちで大賑わい。この日は土曜日だったので、休日メニューのなかから「Jo’s Breakfast Sandwich」をオーダー。
ヴィーガン料理だからもちろんお肉は使ってないのだけど、すごくジューシー!
腹ごしらえを終え、いざキャンプ・フログ・ノーの会場へ向けて出発。

会場のエクスポジション公園に到着! 昨年同様、エントランスからセキュリティチェックのゲートまで長蛇の列ができていた。はやる気持ちをおさえて列に並ぶ。今日のお目当はタイラーとラナ・デル・レイ!

会場の地図。メインの「Campステージ」と一回り小さい「Flogステージ」の2ステージ構成。広大な敷地内には、種類豊富なフードベンダーをはじめ、出演アーティストのグッズを売る物販テント、タイラーグッズを景品でもらえる的屋、絶叫マシンや観覧車といったアトラクションなど、最初から最後(昼12時から深夜24時すぎ)まで半日いてもまったく飽きさせない充実の会場設備が整っている。

会場の雰囲気はとても和やか。来場客は10〜20代の若い子たちが中心に見受けられた。あくまで個人的な感想だけど、イケメンのフットボール選手系も、オタク系も、男も女も、肌の色も関係なく、一人ひとりが「自分が主役」といった感じでその瞬間瞬間を全力で楽しんでいる印象を受けた。若さゆえか、それともアメリカ国民の気質ゆえか、とにかくみんな元気いっぱい。そこらじゅうが笑顔であふれていた。以下、Golf Mediaより写真を拝借。

メインの「Campステージ」。

会場内のあらゆるところが写真撮影スポット。

「Flogステージ」の近くにある憩いの場。ひまわりと「Golf Le Fleur」のオブジェが目を引く。

両ステージに豪華な面々がひっきりなしに出ているのに、誰がアトラクションなんかに乗るの?と思われるかもしれないけど、とくに絶叫マシンは大人気で夜のヘッドライナーが歌っているときでさえ行列ができていた。

巨大ミニオン(GOLFバージョン)!


Camp Flog Gnaw 2017 - At Camp With 20NVR

ステージ上のパフォーマンスはもちろんのこと、ラップの本場アメリカの観客の反応を観察できるのも海外フェスの魅力。会場ではステージ転換のあいだもずっとラップが流れているのだけど、今年はカーディ・B「Bodack Yellow」、21サヴェージ「Bank Account」がかかると必ず合唱が起きていた。1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8というカウントを何度耳にしたことか。

この日最初に見たのはロイ・エアーズ!
ロサンゼルスの陽の光を浴びながら聴く「Everybody Loves the Sunshine」は格別だった。沖縄で本場仕込みのゴーヤチャンプルーを味わうかのような。

つづいてはカマイヤ!
バックダンサーを従えて迫力のパフォーマンス。「Go yah yah, go yah yah, go」のコール・アンド・レスポンスで盛り上げる。どの曲も最後はフ〜チ〜フ〜。
お次はケレラ!
ガツガツ盛り上げるカマイヤとは対照的に、しっとり艶やかなヴァイブスが会場を包み込む。この日の出番はお昼の時間帯だったけど、日が沈んで暗くなってからの方がより雰囲気が出ると思う。恵比寿LIQUIDROOMでの来日公演に期待。

「Campステージ」に移動して、ブロックハンプトンを見る。
全員青塗り、おそろいのオレンジ色のつなぎ姿で登場。ケヴィン・アブストラクトが「どうしていつもゲイについてラップしてるかって?/誰も歌わねえからだよ」と叫ぶ「JUNKY」のパフォーマンスが鮮明に記憶に残っている。無音になって、メンバー全員がステージ上に突っ伏したり、演出も凝っていて面白かった。

このあとは名前が伏せられている“スペシャル・ゲスト”が登場。固唾を飲んでステージを見守るなか発表されたゲストはマック・デマルコだった。うーん、代官山UNITで来日公演を見たことあるしなー。というわけで今回は見送ることにして「Flogステージ」に戻る。ちょうど6LACKが「PRBLMS」を歌っているところだった。

そのあとに見たデンゼル・カリーのステージが衝撃的だった!
予習なしでふらっと観たのだけど、かっこよすぎて度肝をぬかれた。まさに熱狂を絵に描いたような盛り上がり。ULTコールがすごかった! タトゥーを彫るなら「ULT」って入れたい。ニルヴァーナの「Smells Like Teen Spirit」カラオケ大会もやばかった!

Denzel Curry - ULT (live) @ Camp Flog Gnaw 2017


Denzel Curry - Smells Like Teen Spirit (live) @ Camp Flog Gnaw 2017

再び「Campステージ」に移動して、シドとマック・ミラーをつづけて見る。
デンゼル・カリーのステージ鑑賞でだいぶ体力を消耗したので(あれは本当にすごかった)、水分補給をしつつ、ゆったり落ち着いて見た。夜風に吹かれながら聴く「Dang!」が最高にチルで気持ちいい。

後ろ髪を引かれるもマック・ミラーのステージ途中でまたまた移動して、ミーゴスを見る。しかしさすがミーゴス、すごい人気で混んでいるし、おまけに次のタイラーの出番が近づいていることもあり、遠巻きから3曲ぐらいしか見られなかった。欲張ったのが裏目にでる結果に。これならミーゴスを諦めてマック・ミラーを最後まで見ればよかったと反省。

そしてお待ちかねのタイラー登場!
本人もツイートして(その後消し)たけど、「Yonkers」、「Radicals」、「Tron Cat」といった、これまでの定番ヒット曲なしでも盛り上げられるようになり、確実に「進化」している。「911」を披露したときは、この日が誕生日だったフランク・オーシャンをお祝いする場面も。ハッピーバースデー、フランク!
 1日目のヘッドライナーはラナ・デル・レイ!
女子の黄色い声がすさまじかった。ちょろっと笑顔を見せるだけで、きゃー、というか、ぎゃーという悲鳴にも似た声援が飛び交っていて、まさにアイドルといった感じ。仏頂面の人っていうイメージがあったけど、笑顔も話し方もとてもチャーミング。歌も「SNL」に出たときに下手くそだと批判されたことがあったけど、全然そんなことはなく、蚊の鳴くような声で歌うラナ節をたっぷり堪能。ロサンゼルスの地で「West Coast」を聴くこともでき、大満足で帰路につく。すっかりへとへと。宿に着くなり即就寝。
ロサンゼルス滞在3日目。快晴。この日もキャンプ・フログ・ノーへ行く前にまずは腹ごしらえ。ハイランド・パークのもうひとつのメインストリートである「York Street」へ。ハロウィン前日の日曜日だったので、庭先に立つおばけのカカシや、タコス屋の軒先にぶら下げられたピニャータなどを目にした。

ラーメン屋の「Ramen of York」に入店。

黒が基調の店内は日本のラーメン屋とほとんど変わらなかった。日本のラーメン屋といえばダサいJポップを聴かされる羽目になることも多いけど、ここのBGMはカニエの曲などラップが流れていて、いちいち感動してしまった(ちなみに「Last Call」。渋い選曲)。日常にヒップホップのある風景。

前菜の枝豆。ライムの皮がまぶしてあって不思議な味がした。

豚バラ丼。縦半分にカットされたシシトウガラシがピリッと味にアクセントを加える。rice ball(おにぎり)だと思っていたところに、rice bowl(丼ぶり)が来てびっくりした。

醤油ラーメン。魚介だしの風味が効いたあっさり味で美味しかった。

道中のストリートで出くわしたベンチがエックスエックスエックステンタシオン『17』仕様だった! これまた日常にヒップホップのある風景。

キャンプ・フログ・ノー2日目の会場に到着。今日のラインナップは昨日以上に豪華で楽しみ。

2日目の最初はスティーヴ・レイシー!
「数年前まではみんなと同じ観客のなかのひとりだったのに、まさか自分がステージの上でこうして演奏できる日が来るなんて夢みたいだ」と話すのを聞いて、胸にジーンときた。N.E.R.D.の「Sooner or Later」のカバーも披露!
つづいてはドーモ・ジェネシス!
「俺のポケットにはいつもこれ(ウィード)が入ってるんだぜ」なんて言いながら、上機嫌で吸いまくっていた。澄み渡る青空のもと、昼下がりのロサンゼルスをレイドバックした空気が包み込んで気持ちいい。ゲストにホジー・ビーツが駆けつけた。パフォーマンス中、バックスクリーンに流れる赤いトヨタカローラを運転するドーモの映像を見て、そういえば『Red Collora』(17年)とタイラーの『Flower Boy』は、車という舞台装置、カセットテープ風のジャケットデザインが同じだと気づく。

お次はケラーニ!
昨日のデンゼル・カリー同様、予習もせずにふらっと見たのだけど、圧巻のパフォーマンスに一瞬で魅了されてしまった。めちゃくちゃ可愛い! 贔屓にしているティナーシェイには悪いけど、浮気してしまいそうだ。日本に帰ってきてからはケラーニの『SweetSexySavage』(17年)をひたすら聴いている(あとデンゼル・カリーの『Imperial』(16年)も!)。

ケラーニ可愛かったなあ(ため息)とすっかりのぼせ上がった頭のまま、「Campステージ」から「Flogステージ」に移動。

「Flogステージ」ではプレイボーイ・カーティがまさに「Magnolia」を演っているときだった! ただし、会場は人で溢れかえっていて、後ろの木の陰から見るしかなかった。それでもびんびんに伝わってくる熱量。するとヒートアップした観客が木によじ登り、折れるんじゃないかってぐらいの勢いで枝をぶんぶん揺さぶり始めた。それを見たオーディエンスの熱狂はさらに高まり、あたり一帯がカオス状態に。とんでもないところに来てしまったと思っていたら、右のほうでまた何やら騒ぎが起こっている。どうやら木から降りてきた興奮状態の観客を警備員が捕まえたらしかった。捕まった観客を中心にさっと円ができて、そのまわりを取り囲む見物人たちが手にしたスマホでいっせいに撮影する光景は、これぞ「WORLDSTAR」な瞬間で、場違いながらこれがアメリカか、と感動してしまった。

プレイボーイ・カーティの狂乱を切り抜け、つづいてはケリス!
タイラーも大喜び間違いなしの、怒涛のネプチューンズ祭りに大興奮! 
ふたたび「Campステージ」に移動して、ジ・インターネットを見た。シドのやさしい歌声に癒されて、束の間の休息。

いよいよ終盤戦に突入。エイサップ・ロッキーの登場!
盟友タイラーが駆けつけ「Who Dat Boy」を披露! どっかんどっかん大盛り上がり。「L$D」などソロ曲を数曲歌って、またしてもゲストを呼び込むロッキー。ん、誰だこのイケメンは!と思いきや、Gイージーだった。ロッキーとのコラボ曲「No Limit」でさらに盛り上がる。めちゃくちゃかっこよかった! 男でも惚れてしまうー。「F**kin' Problems」のロッキーのヴァース「レズビアンの女も俺にかかれば男の虜」を思い出す。
この時間帯にもう一方の「Flogステージ」にはリル・ヨッティが出ていて、どちらをとるか悩んだ挙句、結局ロッキーを選んだのだけど、なんと最後にそのヨッティがステージに乱入! パフォーマンスはもちろん、曲間にロッキーと言葉を交わす際、本当に「リル・ボート」って連発して言ってるのに感動した!

ソランジュ!
日の丸や石柱といった舞台美術、モダンかつ古代ギリシア人を彷彿させるような衣装、NHKの教育番組でありそうな不思議な動きのダンス、バックバンドのメンバーまできっちり振り付けされた演者の一挙手一投足、MCなしで中断なく紡がれる演奏。ステージを構成するすべての要素に演出が行き届いた完璧なパフォーマンスで超感動。これぞパフォーマンスアート。もはや神聖な儀式である。感動のあまり、目は始終潤みっぱなしだった。

SOLANGE SET // CAMP FLOG GNAW 2017

タイラーもソランジュを大絶賛。「awesome:形容詞 ①ソランジュ」


名残惜しいけど、とうとう今年の大トリ、キッド・カディ!
なんといってもいちばんブチ上がったのはキッド・カディが「Father Stretch My Hands」を演ったとき。イントロから「If Metro don’t trust you〜」までために溜めて、一気に爆発! そしてカニエのヴァースはみんなで大合唱。
『Flower Boy』のレビューのなかで、タイラーが今年のヘッドライナーにキッド・カディを選んだ理由として、孤独に陥り、幸せを模索するいまのタイラーの孤独な気分にキッド・カディの歌がハマるからだと書いたのだけど、

それを裏付けるかのように「Pursuit of Happiness」を披露するにあたり、「去年は地獄のような経験をして大変だった。でも乗り越えられる。その証拠に俺は今日こうしてここに立つことができた」、「家族や友人、愛する娘に囲まれて、俺はいま最高にハッピーだよ!」と言っていて我が意を得たり。元気になって良かったね!

Kid Cudi Speech and Performance Camp Flog Gnaw 2017

以上にて「キャンプ・フログ・ノー・カーニバル 2017」閉幕。楽しかった!

タイラーが帰りの電車案内をしてくれる@会場出口。今年も大満喫できました。ありがとう、タイラー!


ロサンゼルス滞在4日目。曇り空で雨もパラパラ降り始めてきた。宿をあとにして空港へ向かう。さすが郊外の街だけあり、UBERが全然拾えない。これまでで最長となる30分ぐらい待って乗車。この待ち時間も影響してか、朝の通勤ラッシュの大渋滞に巻き込まれてしまう。ドライバーいわく「ロサンゼルスは毎朝大渋滞さ」とのこと。そういえばカニエも「No More Parties In LA」でロサンゼルスの交通事情について歌ってたっけ("You know it, L.A., it's so jammin'")。

そのドライバーがさっきからため息ばかりついている。地元の球団ロサンゼルス・ドジャースが昨夜ワールド・シリーズの大事な試合で敵チームに敗れたのがショックらしい。「ロサンゼルス中の人が落ち込んでいるよ」と言っていた。滞在最終日にしてようやく脳が英語モードに切り替わったのか、「それじゃ今朝の雨はロサンゼルス市民の涙なんですね」と我ながらうまい返しができた。

ドライバーが機転を利かせて、ナビの渋滞情報を手がかりにフリーウェイと一般道を何度も乗り降りしながら運転してくれたおかげで、搭乗時間に間に合うことができた。
10時20分ロサンゼルス発の便で出発。機内では、ダニエル・クロウズ原作の『Wilson』(日本劇場未公開)、『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』(17年)を観た。ウディ・ハレルソンが原作に忠実な偏屈おやじを好演していた。最後に『ローガン』(17年)を再見して泣く。

日本時間10月31日(火)14時55分に羽田到着。その足で川崎のTOHOシネマズに寄って『ゲット・アウト』(17年)を観た。ついさっき空港でお世話になったTSAが大活躍する映画だった。I'm T.S... motherfuckin'-A!

帰ってきた翌日の11月1日(水)、N.E.R.D.が新曲「Lemon」を発表! キャンプ・フログ・ノーの会場で見かけた謎の広告はこれのことだったのか。N.E.R.D.の再始動はタイラーもさぞかし嬉しいだろうなあ。そんなタイラーを歓喜させるニュースはさらにつづいて、エミネムも新曲「Walk On Water」をリリースした。こうなったら来年のキャンプ・フログ・ノーのヘッドライナーはN.E.R.D.とエミネムで決まり!

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