2016年2月21日日曜日

カニエ・ウェスト『The Life of Pablo』〜パウロへの手紙



 ピカソ? エスコバル? それともネルーダ?などと憶測が飛び交ったKanye West(カニエ・ウェスト)の『The Life of Pablo』(16年)における「パブロ」の正体だけど、正解は新約聖書の著者のひとりであるパウロでした。そこで聖書のスタイルにならい「パウロへの手紙」と題して、カニエへの思いを綴る。

 Kendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)が”2015年最大の偽善者”なら、2016年最大の偽善者はカニエだと思う。

 カニエは「世界をよくしたい」とか聞こえの良いことを言ってるけど、それならまずはTidal限定配信という形態でリリースされた『The Life of Pablo』をフィジカル/デジタル含め普通に流通させることで、世界に貢献して欲しい。カニエの作品を聴きたくても聴くことのできない世界中のリスナーの「飢え」を改善することが、世界をよくするためにカニエが出来る最初の一歩だと思う。カニエほどの大物ミュージシャンの作品が、SpotifyでもApple Musicでもなく、よりによってTidalでしか聴けないなんて、そんなのはっきり言って、悪である。

 カニエはマーク・ザッカーバーグに向けて「俺のアイデアに投資してくれ」とも言っている。夢の実現のために資金援助を求めているのである。
 そりゃ、音楽アルバム一枚から得られる収益なんて、カニエにとっては雀の涙程度だろうけどさ、それでも『The Life of Pablo』を普通に流通させてくれれば、ネットでタダで落とせると知っていても、喜んで対価を払う。そしたらアルバムの売上から得た資金を音楽制作でも、洋服づくりでも、2020年の米国大統領選挙出馬資金でもなんでも好きなように使ってよ。それで「世界をよく」していけばいいじゃん。




2016年2月14日日曜日

カニエ・ウェスト「Only One」



 Kanye West(カニエ・ウェスト)の「Only One」って、子どもをもうけてから間もなかったリリース時期や「オンリー・ワン」という曲名、娘ノースを写したジャケット写真などから普通に考えれば、カニエが愛娘へのあふれんばかりの愛や慈しみを歌ったものだと考えがちだけど、実際はカニエの亡き母ドンダが天国から息子カニエに優しく語りかける歌である。カニエらしいといえばそれまでだが、それにしてもこの期に及んで「自慢の息子」自慢をするって、どんだけ自分のことが好きなんだよ! 歌のなかのドンダはカニエにとって耳心地のいいことしか言ってないけど、息子によるTaylor Swift(テイラー・スウィフト)への酷い仕打ちを知ったら「女の子には優しくなさい!」とか小言の一つや二つ言うはずだよ。(その点、Jay Z(ジェイ・Z)は素敵なお父さんだよねと「Glory」「New Day」を聴くとつくづく思う。)


Kanye West - "Only One (feat. Pual McCartney)"

カニエ・ウェスト「Real Friends」



 馬鹿と天才は紙一重という言葉は、だれがどのようにして思いついたのだろう。思いついたからには、そう思わせるようなトンデもない人物を目の当たりにしたにちがいない。Kanye West(カニエ・ウェスト)の名前がゴシップ記事の見出しを飾るのを見るたびに、馬鹿と天才は紙一重という言葉によく似た、ある歌詞の一節が頭に浮かぶ。
 カニエ・ウェストが7thアルバム『The Life of Pablo』(16年)収録の「Famous」で、あの悪名高いMTVの受賞スピーチ妨害事件で可哀想な目にあわせたTaylor Swift(テイラー・スウィフト)に対して、またひどいことを言っている。「フェイマス」と題されたこの曲でカニエは、かの事件がテイラーを有名にしたのだと主張している。まったく反省した様子が見られない!「テイラーとセックスしてやってもいいぜ/俺があのビッチを有名にしてやったんだ」。カニエが最低野郎なのは間違いない。でもそれは仕方のないことだと思う。高慢で下衆な最低男。それがカニエ・ウェストなのである。この男が馬鹿をしでかして非難轟々だと聞くたびに、カニエという存在をわかりやすく言い当てた「Otis」中の一行「Sophisticated ignorance, write my curses in cursive(洗練された愚か者、罵り言葉を筆記体で綴る)」がいつも頭をよぎる。『The Life of Pablo』でもアートワークにラフ・シモンズのデザイナーを起用するなど、本当に趣味は良いんだけど、どうしても言動が愚かしい。だがそれがカニエというもの。この先どんなに名声を獲得したとしても、カニエには世界平和とか環境保全を訴えるような真似はしてもらいたくない。カニエにはこれまでと変わらずエゴむき出しの馬鹿な主張を続けてもらいたいものだ。(カニエは「Famous」のテイラーに言及したリリックへの批判に対して、悪意は一切なく、事前にテイラーも承知のことだと主張している。)
 カニエとテイラーといえば、2015年のグラミー賞授賞式で親しげに言葉を交わす姿が見られ、てっきり和解したものだと思っていたのに。少なくともテイラーの方はカニエと「友達」になれたと思っていたはず。カニエは「Real Friends」の冒頭「本当の友達は何人いるだろう?/本当の友達はほんの数人、笑って話しているけれど/偽りのない笑顔はそのうち何人?信用問題」と友人に対して猜疑心を抱いているようだけど、問い質したいのはこっちだよ!

Jay Z & Kanye West - "Otis"

2016年2月9日火曜日

ドレイク「Summer Sixteen」



 Drake(ドレイク)が「sixteen」、「looking for revenge(復讐の機会を狙ってる)」とか言ってるのを聞くと、イケてなかった16歳の頃を振り返りつつ、有名人になった今の地位や名誉を喧伝して、かつて自分を不当に扱った連中への復讐を図る「負け犬の逆転劇」を期待するのは、「同窓会リベンジ」を企てる「Pound Cake」や、献身的に尽くすも自分を捨てた元恋人に「売れた今の俺」の話をして見返そうとする「How Bout Now」を連想してしまうから。ドレイクは最強の「三枚目ラッパー」だと思う。奇妙で愉快なへなちょこダンスが話題を呼んだ「Hotline Bling」がわかりやすい例だけど、ドレイクは道化を演じることに自覚的で、なおかつそれが上手い。「Summer Sixteen」を聴いて笑ってしまったのは、ドレイクのゴーストライター起用疑惑を口火に喧嘩中のMeek Mill(ミーク・ミル)への復讐方法。なんでも聞くところによれば、ミークがガールフレンドのNicki Minaj(ニッキー・ミナージュ)と一緒にツアーでドレイクの地元トロントを訪れた際、ドレイクは二人の宿泊したホテルの部屋のちょうど真上の部屋を借りて、ディス曲「Back to Back」を階下のミークに聴こえるように繰り返し再生したとか(I let the diss record drop, you was staying right below me/We must play it a hundred times, you was going to bed)。ニッキーといちゃいちゃしようとしたら、上の部屋から憎きドレイクの歌声が聴こえてくるんだから、ミークにとっては堪ったもんじゃない。それにしても、なんとも大人気ない復讐方法である。この笑えてちょっとダサい感じこそ、ドレイクを最強の三枚目と呼びたくなる所以である。The Game(ザ・ゲーム)の「100」という曲でドレイクは「カネや名誉がなければ、もっと友達がいたんだろうな/本音の代わりにおべんちゃらを言えれば、もっともっと友達がいたんだろうな」と皮肉交じりにセルフボーストをキメているのだけど、昔イケてなかった頃はきっと友達が少なかったであろうドレイクが言うと、簡単には聞き流せないというか、言葉の重みが違って響く。そんなザ・ゲームの「100」は、ミュージックビデオでドレイクがエキストラの中からもっさりしたイケてない風の少年をカメラの前に引っ張り出してくる、まさに類が友を呼ぶ瞬間が最高!

The Game - "100 (feat. Drake)"

 

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