2016年1月27日水曜日

『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』第二話〜ZARD「負けないで」



 坂元裕二脚本のテレビドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』第二話を観た。それにしても、ZARD「負けないで」の使い方が秀逸すぎる。これまでに応援歌の定番であるこの曲がこんな風に「嫌な感じ」で使われたことがあっただろうか。嫌な感じと言っても、ブラック企業の雇い主が酷使されてヘトヘトになっている従業員に対して「負けないで〜」と歌いかけるこの場面は、ギャグというか、ブラックジョークなわけだけど、悪意をこめて歌われたときの意外性と暴力性には凄まじいものがある。しかも、本編ではサビのさわりの部分だけしか歌われなかったけど、続く歌詞は「どんなに離れてても 心はそばにいるわ」という、離れ離れになった杉原音(有村架純)と曽田練(高良健吾)の心境を表現した、そしてその後二人が「最後まで走り抜け」た末に再会を果たす展開を予期させる内容なのだから、見事というほかない。さらに歌詞の続きに耳を傾けると、やはりこの曲は東京で頑張る音や練に向けられたまごうことなき応援歌なのだと思えてくる。「追いかけて 遥かな夢を」。



2016年1月24日日曜日

『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』と『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』



 坂元裕二脚本のテレビドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(16年)の第一話を観た。杉原音(有村架純)と曽田練(高良健吾)が愛らしいことこの上ない! 他愛のない会話の豊かさに、ああ、坂元裕二作品を観ているのだと実感する(「東京ってさ、一駅分くらい歩けるって本当?」「本当です」「嘘だ」「三駅くらい歩けますよ」「嘘言うな、三駅って戦士やん」「戦士じゃないです」「競技やん」「競技じゃないです。三駅歩く競技ないです」「ふふ、飴食べ」のくだりが最高すぎる)。この愛らしさ、最近別の作品でも感じたなと思い返してみて、思い当たったのは『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(15年)だった。『いつ恋』の主演二人の姿は『フォースの覚醒』の新たな主人公レイ(デイジー・リドリー)とフィン(ジョン・ボイエガ)のそれに重なって見える。この二組の設定を比べてみると、類似点が多いことに気づく。まず「孤児」という共通点が挙げられる。音は幼いころにシングルマザーの母と死別して、里親に引き取られる。練も何らかの理由により親がいないことが本人の台詞から確認できる。一方、『フォースの覚醒』のレイとフィンも、詳しい事情はまだ明らかになっていないが、幼いころに親と引き離された孤児である。生い立ちに続いて指摘したい類似点は、それぞれのパートナーとの出会い方。二組とも最初の出会いは「窃盗の誤解」を通じてだった。練は友人の中條晴太(坂口健太郎)が旅先で盗んできたカバンのなかに古びた手紙を見つける。手紙を読んだ練はその内容に深く感じ入り、持ち主に返すべく音のもとを訪ねるも、音からは泥棒扱いされてしまう。対してフィンも、ストームトルーパーのスーツを脱ぎ捨て代わりに羽織ったポー・ダメロン(オスカー・アイザック)のジャケットを、BB-8とレイに盗んだものだと勘違いされ追い回されたのが最初の出会いだった。音は勤務先のクリーニング店の物差しを手に、レイは棒状の武器「クォータースタッフ」を手に泥棒に立ち向かうという格好もなんとなく似ている。『いつ恋』劇中で「つっかえ棒」と表現される音の手紙は、亡き母の記憶を留めた数少ない品のひとつで、音の心の支えとなっている。記憶を留めた物品といえば、『フォースの覚醒』のライトセーバーも同様である。マズ・カナタの城で呼び寄せられるようにして見つけたライトセーバーに触れたレイは、彼女の父(と思われる)ルーク・スカイウォーカー(マーク・ハミル)の記憶をフラッシュバック体験する。フォースの争いに慄いたレイはライトセーバーの受け取りを拒むが、フィンを介してレイの手へと渡る。一方、音の手紙も練が遠路はるばる届けにやって来たというのに一時は受け取りを拒否されるが(「大事なものって荷物になんねん」の台詞に唸る)、最終的には練(の運転する運送トラックのダッシュボード)によって彼女の手元に返される。音を閉塞した田舎町から連れ出した練の運送トラックは、『フォースの覚醒』でいうミレニアム・ファルコン号にあたると言えるかもしれない。ニューオーダーの爆撃を受けて吹き飛ばされたフィンに手を差し出すレイと、男女は逆転するけれど、里親の家を飛び出した音をトラックのなかに引き込もうと手を差し伸べる練の姿が重なる。『いつ恋』『フォースの覚醒』どちらの作品も素晴らしい「ボーイ・ミーツ・ガール」ものの青春ドラマなのである。


「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」



2016年1月11日月曜日

リル・B 'ザ・ベイストゴッド'「Jerry」と「Fetty Wap」



 Lil B 'The BasedGod'(リル・B 'ザ・ベイストゴッド')の『Thugged Out Pissed Off』(15年、全63曲、収録時間3時間50分、容量322.9MB)を聴いていて、やたらと耳につく「jerry」と「fetty wap」。リル・Bは「jerry」と「fetty wap」を売りまくっている(sellin jerry/sellin fetty wap)。調べてみたところによると「jerry」はリル・Bの地元ベイエリアのスラングで「オキシコンチン」の意味、「fetty wap」は「乾燥大麻」の意味で使っているらしい。つまりドラッグを売りさばいているということ。


Lil B 'The BasedGod' - "BasedGod"

リル・B 'ザ・ベイストゴッド'『Thugged Out Pissed Off』



 Lil B 'The BasedGod'(リル・B 'ザ・ベイストゴッド')は怒っている。
『Thugged Out Pissed Off』(15年)に収録の「I Can't Breathe」は曲名から容易に察しがつくように、ニューヨークで警官に背後から首を絞められ死亡した黒人男性の最期の言葉「息ができない」に着想を得たのだろう。「”人種隔離は終わった”だなんて馬鹿げてる」といまだ根強く残る人種差別意識に憤りを見せる。続いて怒りの矛先が向けられるのは権力を盾に女性を暴行する警官。暴行の原因を被害女性の服装に求めるというなんとも愚かしい言説(ふしだらな身なりをしているのが悪い。誘っている。など)に対して「ストリートは裸で歩いても平気であるべき」と対抗する。 リル・Bの音楽は多くのひとの救いになっている。リル・Bのおかげで兄弟の自殺を乗り越えられたというファンの声もある。神の名にふさわしい聖人のようなリル・Bだけど、他方では悪魔のようなおそろしいことを言っている。「Black Bitch Stole」でもリル・Bは怒っている。「Black Bitch Stole」はリル・Bの部屋から10,000ドルを盗んだ女性についての歌という謎の設定の一曲。おそろしいのはカネを盗られて怒り狂ったリル・Bの復讐手段で、なんとその女性をアナルセックスで犯したのち屋根のうえから投げ捨てるのだ。酷すぎる。まさにヤリ捨てである。一方では道徳的に正しいことを説き、また一方では反道徳的な行為に及ぶリル・Bの言葉には、毎度ながら聴いていて混乱させられる。僕はリル・Bの矛盾するメッセージについて、「悪」を馬鹿馬鹿しいぐらいに戯画的に演じてみせることで、逆説的に「善」を説いているのだと理解しているのだがどうだろう。「女性を痛めつけることは白人に教わった」と言い放つ衝撃の一曲「White Man」の言葉をそのまま鵜呑みにすることはもちろんできないが、これ以上皮肉に満ちた曲もないだろう。


Lil B 'The BasedGod' - "I Can't Breathe"


Lil B 'The BasedGod' - "Black Bitch Stole"


Lil B 'The BasedGod' - "White Man"

2016年1月1日金曜日

タイラー・ザ・クリエイターの2015年お気に入りソング



 Tyler, The Creator(タイラー・ザ・クリエイター)が2015年のお気に入り楽曲を発表! 敬愛するPharrell(ファレル)絡みの曲の多い、とてもタイラーらしい選曲である。タイラーは『GOLF BOOK』において、「最近のファレルは成熟した大人のディスコ調の曲を作っているけど」とどことなく物足りなさをほのめかすような文章を書いていたけど、どちらもファレルの参加曲であるMissy Elliott(ミッシー・エリオット)の"WTF"にしろ、Puff Daddy(パフ・ダディ)の"Finna Get Loose"にしろ、2015年は絶頂期のネプチューンズを思わせる楽曲が聴けて、タイラーにとってはさぞ喜ばしい一年だったに違いない。


Missy Elliott - "WTF (feat. Pharrell Williams)"


The Garden - "All Smiles Over Here :)"


Tyler, The Creator - "OKAGA, CA"


Phony Ppl - "Baby, Meet My Lover"


The Internet - "Curse"


Puff Daddy & The Family - "Finna Get Loose (feat. Pharrell Williams)"


Erykah Badu -"Hello (feat. Andre 3000)"


Snoop Dogg - "California Roll (feat. Stevie Wonder & Pharrell Williams)"


A$AP Rocky - "Jukebox Joints (feat. Joe Fox & Kanye West)"

 

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