2015年12月27日日曜日

ヴィンス・ステイプルズ「Lift Me Up」



 2015年の印象深いリリックについて。
 Kendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)とは違い、地元ロング・ビーチのギャングのメンバーとしてバリバリ活動していたVince Staples(ヴィンス・ステイプルズ)は決して「いい子」ではなかった。ヴィンスのデビューアルバム『Summertime '06』(15年)はギャングの輪のなかに身を置くも、それを礼賛するでなく、どこか一歩引いたような冷めた視点で語られていて面白い。

This shit ain't Gryffindor, we really killin, kickin doors
ドアを蹴破り殺しも厭わない俺たちはグリフィンドール生じゃない


Vince Staples - "Lift Me Up"

リル・Bとベイストゴッド



 Lil B 'The BasedGod'(リル・B 'ザ・ベイストゴッド')が地元オークランドの地方紙「イースト・ベイ・エクスプレス」のインタビューで、「リル・B」と「ベイストゴッド」の違いについて語っている! これまでその違いや使い分けについて疑問に思っていたものの、明確な説明がされてこなかったのでたいへん貴重な証言である。リル・B風に言うなら「レア(#RARE)」。曲中ではしばしばベイストゴッドを名乗りラップするリル・B。なんでもリル・Bにとってベイストゴッドというのは「見習うべき模範」であるらしい。リル・Bがベイストゴッドの名前のもとラップするのは、高位の存在であるベイストゴッドがリル・Bの体を借りることで、いわば「神の声」をフリースタイルという形で我々に伝えているのだという。曰く「ベイストゴッドは完全無欠の存在。リル・Bはベイストゴッドに憧れている。俺は本気でベイストゴッドになりたいんだ」とのこと。


Lil B 'The BasedGod' - "Flexin Maury Povich"

2015年12月19日土曜日

TOP 3/2015


TOP 3/2015

MUSIC
#1. TYLER, THE CREATOR - CHERRY BOMB
「2SEATER/HAIR BLOW」の終わりのスキットがコミカルで笑いを誘う。でもこのスキット、ただの箸休めだと思って軽視することなかれ。何なら『Cherry Bomb』のすべてが凝縮されていると言っても過言ではない。タイラー・ザ・クリエイターは三本立て特別上映を観に訪れた映画館「ムーン・シアター」にて、知人二人と出くわす。彼らとの会話を通して、世の中には二種類の人間がいることがわかる。夢や目標に向かって努力している人と、そんなひとたちのことを妬ましく思い、陰で嘲ったり悪口を言うひと。あなたはどちらの道を選ぶだろうか? そんなの決まってんじゃん。それじゃあ、ぶつくさ言ってないで行動しようぜ。というのが、タイラーがアルバムのテーマ「Find Your Wings」に託したメッセージだ(OMSBの「Think Good」も同じことを歌っている)。

#2. TRAVIS SCOTT - RODEO

#3. LOGIC - THE INCREDIBLE TRUE STORY


BOOK
#1. 長谷川町蔵+山崎まどか - ヤング・アダルトU.S.A. ポップカルチャーが描く「アメリカの思春期」

#2. TYLER, THE CREATOR - GOLF BOOK CHERRY BOMB ISSUE

#3. TOBIAS HANSSON & MICHAEL THORSBY - DAMN SON WHERE DID YOU FIND THIS?


MOVIE
#1. GREGORY JACOBS - MAGIC MIKE XXL

#2. F. GARY GRAY - STRAIGHT OUTTA COMPTON

#3. NEILL BLOMCAMP - CHAPPIE




2015年12月14日月曜日

ザ・ウィークエンド「King of the Fall」〜全部ゴックンさせるんだ



 アルバムが一周したのに「その曲」を聴いた覚えがないので、もしかしたら聴き逃したのかもしれないと思い、トラックリストに目を通すも、やはりその曲は見当たらない。なぜだ? The Weeknd(ザ・ウィークエンド)の『Beauty Behind the Madness』(15年)に「King of the Fall」が収録されていない!「King of the Fall」はアルバムに先駆けて、2014年にザ・ウィークエンドが発表したシングル曲である。もちろんアルバムに収録されるものだと思っていたら未収録だったので面食らってしまった。お気に入りの曲で繰り返し聴いていただけに、残念でならない。ミュージックビデオまで作られていたのに。ただ、それでもアルバムを何周か聴くうちに、この作品がこれまでのザ・ウィークエンド作品とは違うことに気付き始める。一言で言うと「売れ線」なのだ。すごくキャッチー。でも、やっぱりズブズブでドロドロでエロエロしててこそ、ザ・ウィークエンド。ちょっと物足りないかも。そんなことを考えていたら、Abel Tesfaye(エイベル・テスファイ)本人が「ニューヨーク・タイムズ紙」のインタビューで、売れることを狙って作ったと発言しているではないか。「世界の頂点を獲りたい(I absolutely wanna be the beggest in the world)」と決意したエイベルはレコード会社のA&R、ウェンディ・ゴールドスタインに助言を求め、近年のヒット作請負人として知られるスウェーデン人プロデューサーのMax Martin(マックス・マーティン)の制作チームと仕事を始める。流行りのディスコ調サウンドを取り入れたり、歌詞もそれまではすべてエイベルが書いていたのを、今回はソングライターと共作するなど新しい試みを行っている。そうして完成したのが『Beauty Behind the Madness』。狙い通り、新生ザ・ウィークエンドのアルバムは見事に大ヒットを記録する。この年のグラミー賞でも「最優秀アルバム部門」に本作はノミネートされた。けれど、以前までの持ち味だった闇や毒っ気が薄められたことによる物足りなさは否めない。女性をことば巧みに誘い込んで、一緒にイケナイ情事に耽るザ・ウィークエンドが恋しい。さきほどの「ニューヨーク・タイムズ紙」のインタビューによれば、素人時代のエイベルの生活は荒んでいて、近所のスーパーで万引きを犯し、喧嘩に明け暮れ、MDMA、ザナックス、コカイン、マッシュルーム、ケタミンなど、ありとあらゆるドラッグに溺れ、毎晩のようにハイになっていたそう。大麻を売って日銭を稼ぐも、いつも無一文だったらしく、住むところに困った時は女性に「愛してる」とかなんとか声をかけて泊まらせてもらっていたとか。「俺のことを本気でボーイフレンドだと思う女性三人と付き合っていた」とはエイベルの談。って、それ全部歌詞のまんまじゃん!
「King of the Fall」がアルバム未収録なのは、内容が「売れ線」路線に反するからなのだろう。うーん、それにしても「King of the Fall」の大サビは強烈! ビューティなんて微塵も感じさせない、マッドネス全開の世界。これぞ、ザ・ウィークエンドの真骨頂。

俺の女たちは調教されている 俺は全部ゴックンさせるんだ
全部ゴックンさせるんだ
全部ゴックンさせるんだ
全部ゴックンさせるんだ
一滴残らずゴックンさせるんだ


The Weeknd - "King of the Fall"



2015年12月6日日曜日

ロジック「Paradise」



 Logic(ロジック)がインタビューで語ったところによれば、『The Incredible True Story』(15年)に登場する惑星「パラダイス」は、同好の士のためにロジックが創造した惑星であり、音楽好きのポジティブ思考な人々が暮らす場所だという。他者への尊敬の念を忘れなければこの惑星に招かれるらしい。さすがロジック、超ポジティブ! ポジティブといえば、Lil B 'The BasedGod'(リル・B 'ザ・ベイストゴッド')の言う『Basedworld Paradise』って、いまいちどんな場所なのかよく分からないけど、多分ロジックの惑星「パラダイス」に近いんじゃないかな。


Lil B 'The BasedGod' - "Basedworld Paradise"


Logic Calls Out Blogs, Talks Secret Language of Success, Kanye, Fear of Flying, Grammy Speech

ロジック「City of Stars」



 Logic(ロジック)の「City of Stars」が何処となくなくKanye West(カニエ・ウェスト)の「Say You Will」風に聴こえるのは、「破局」というカニエの曲のテーマを踏襲していることから考えて、おそらく狙ってのことなのだろう(おまけにカニエが「Say You Will」を収録した『808s & Heartbreak』(08年)全編を通して「歌って」いたように、ロジックもこの曲の前半部分ではラップせずに歌っている)。「City of Stars」はロジックの2ndアルバム『The Incredible True Story』(15年)に収録の一曲。Common(コモン)の代表曲のひとつ「I Used to Love H.E.R.」の系譜に連なる「ヒップホップ擬人化曲」である。歌われるのは前述の通り、破局について。コモンは「I Used to Love H.E.R.」で、90年代当時に興隆したギャングスタラップに「浮気した」ヒップホップへ思いの丈を述べていた。ではロジックが大好きなヒップホップに別れを告げる理由とは何なのか。
「City of Stars」の2ndヴァースを聴いてみよう。超ポジティブ思考のロジックがここでは珍しく失望を口にしている。「ファーストアルバムでは人種の話なんてこれっぽっちもしていない/それなのに結論は白と黒のたわ言/どうして好きにやらせてくれないんだ/フロウの巧さの代わりに人種でラップを評価」。犯罪と貧困に彩られた過去の体験について歌ったデビューアルバム『Under Pressure』(14年)は、ロジックの肌色の白さを理由に「ワルを装っている」という誤解を受け、批判された。

 ロジック本人の説明によれば、この曲のコンセプトは「ヒップホップとの別れの歌」だという。続けてロジックは前作『Under Pressure』発表後の心境の変化を次のように記している。「他人の意見をいちいち気にすることもなくなったし、芸術的品位を貶めるような、創作活動への口出しも許せるようになった。”ヒップホップはこうあるべき”という考えにさよならを告げ、ジャンルレスな音楽作りに焦点を当てた」。前作に対する批判を受けて、それならばとロジックの好きなSF映画やアニメ作品に着想を得て作られたのが『The Incredible True Story』である。ストーリー仕立ての本作では、宇宙飛行士のトーマスと操縦助手のカイが、資源が枯渇し居住不可となった地球に代わる第二の母星「パラダイス」を目指して宇宙を旅する過程が描かれる。結論から言うと、最終的に二人は無事パラダイスへ到達して物語は幕を閉じる。しかしこの物語は単なる寓話に過ぎない。ロジックはこの寓話を通して、あるメッセージを伝えようとしている。
 トーマスは「Lucidity」で、かつてミュージシャンになることを夢見ていたこと、また宇宙船での生活(人生)に窮屈さや不自由を感じていることをカイに話す。狭苦しい宇宙船のなかで四六時中生活する身のトーマスたちには「やりたいことをやる」自由がないのだ。そんな二人の会話を経て、アルバムは最後の一曲The Incredible True Storyに突入する。長い宇宙探検の末、ついに惑星「パラダイス」に到達するトーマスとカイ。二人が宇宙船から降り立つと何やら物音が彼らに近づいてくる。グォォォォォ。物音の正体は「Life(人生)」だった。トーマスたちは安住の地にたどり着いたとともに、ようやく真の「人生」を見つけたのだ。任務を終えたトーマスはこのあと、きっと念願の音楽活動を始めるにちがいない。というわけで、本作における惑星「パラダイス」は「自由」を象徴するメタファーになっているように思う。この場合の自由とは「好きなことをする自由」である。「The Incredible True Story」では哲学者アラン・ワッツの言葉が引用されるが、これも「好きなことをすることの尊さ」を説いたものである。

「(学生たちは)画家、詩人、作家になりたいと言います。しかしそうした職業ではお金を稼げないことも同時に理解しています。あなたのやりたいことは何ですか? 本当にやりたいことを見つけたひとに出会ったとき、私はそのひとにお金のことは忘れて、やりたいことをやりなさいと言うようにしています。もしあなたがお金を稼ぐことが一番大事だと考えているなら、この先時間を浪費するだけで、人生を棒に振ることになるでしょう。生活のためにやりたくない事を続けるなんて馬鹿げています。本当に馬鹿げたことです。惨めな人生を長々と生きるよりも、短いながらも好きなことをして一生を終える方がマシです。あなたが好きだと思えることなら、なんでもいいのです。興味の対象は人それぞれです。同じ興味を持ったひとが現れるでしょう。でも好きでもないことに時間を費やして、ましてや子どもたちにも自分と同じ道を辿るよう教え込むなんて本当に馬鹿げています。周りを見渡してみてください。私たちは子どもに自分たちと同じような人生を歩むよう教育しています。子どもに自分と同じ道を歩ませることで、自身の人生の正当化を図って悦に入っているのです。それは吐き気がないのに無理やり吐くようなもので、絶対に上手くはいきません。だから、この質問をよく考えてみることが大事なのです:私は何がしたいのか?」

 批判や他人の意見から解放され、自分の作りたい音楽を自由に作ったロジックの姿は、宇宙船での不自由な暮らしから解放されたトーマスのそれに重なる(作りたい音楽を作ったという点では、Tyler, The Creator(タイラー・ザ・クリエイター)の『Cherry Bomb』(15年)も同じ。「翼を見つけろ」という若者の自己実現を応援するテーマを掲げたタイラーと、「やりたいことをやる」ことの尊さを説くロジックのメッセージは共鳴し合うように思う)。「パラダイス」に到達したのはトーマスだけではない。葛藤を乗り越えた末にロジックが辿り着いた新境地こそが「パラダイス」なのだ。




Logic - "City of Stars"


Logic - "The Incredible True Story"



 

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