2015年10月25日日曜日

グレゴリー・ジェイコブズ『マジック・マイクXXL』〜俺はクッキーモンスター



『マジック・マイクXXL』(15年)が素晴らしい! たとえ苦難を伴うとしても「好きなこと、やりたいこと」に情熱を注いで生きることの尊さを描いているところに感銘を受けた。ダンスコンテストに向かう道すがら、トレーラーのなかでマイクとリッチーが演目内容をめぐって意見を対立させる場面、客受けは保証されているが好きでもない使い古した型に固執するリッチーに対して、マイクは自分のやりたいことに新しく挑戦すべきだと主張する。マイクの助言を聞き入れ、見事に新境地を開拓したリッチーと、それを我が事のように喜ぶ仲間たちとのブロマンス溢れる友情描写は、涙なしに観られない。リッチー以外の仲間たちも、それまでのやり慣れた型を捨て、歌って踊れる俳優を志すケンは「歌」、フローズン・ヨーグルト事業での成功を夢見るティトなら「調理」といった具合に、それぞれの得意分野を取り入れた新しいダンスを考案して最後の大舞台で披露する。
 好きなことに対して忠実になるということは、言い換えるなら欲望に従って生きるということでもある。それはこの作品が描く女性の「性の解放」というテーマともつながってくると思う。あれ、でも言い出しっぺのマイクが最後に披露したダンスは彼が情熱を注ぐ「家具」と全然関係なくね?と思いきや、キッチンでマイクがゾーイと交わした台詞「俺はクッキー派(I'm a cookie guy)」が思い出され、ああそうか、きちんとマイクの「好きなもの」が表現されていることに気づくのであった。エロいぜ、マイク。

クッキー、クッキー、クッキー、俺はクッキーモンスター
後ろから貫き、ロブスターみたくパックリ開く
プッシーをキルして墓穴を掘る
彼女に握られてまるで木の棒
彼女のそれを俺の顔に持ってくる
雨を降らすぞ、ザーザー降らすぞ

うーん、まるでオレオのよう
オレオみたいに真ん中を舐めるのが好きなんだ
オレオ、オレオ、まるでオレオのよう
一口かじって中に入りたいよ 君がいくまで


R. Kelly - "Cookie"


Magic Mike XXL Official Teaser Trailer



2015年10月18日日曜日

ア・トライブ・コールド・クエスト「Bonita Applebum (Pharrell Remix)」〜タイラー・ザ・クリエイターの憧れるファレル、ファレルの憧れるQティップ



 A Tribe Called Quest(ア・トライブ・コールド・クエスト)のデビューアルバム『People's Instinctive Travels and Paths of Rhythm』(90年)の発売25周年記念盤には、Pharrell Williams(ファレル・ウィリアムス)による「Bonita Applebum」のリミックス楽曲が収録される。そういえば、Tyler, The Creator(タイラー・ザ・クリエイター)主催の音楽フェス「Camp Flog Gnaw」(14年)にN.E.R.D.として出演し、その演奏終わりにタイラーが行ったインタビューでファレルは、まだ興奮冷めやらぬといった様子で、憧れの人物を主催フェスに招き、共演まで果たすという偉業を成したタイラーを賞賛するとともに、自身の憧れの人物であるQ-Tip(Qティップ)への憧憬を口にしていた。ファレルについて語るタイラー然り、松井大悟監督の映画『私たちのハァハァ』(15年)の女子高生ヒロインたち然り、ひとが好きなヒトやモノについて目を輝かせて話しているのを見聞きすると、こちらまで嬉しくなる!

「俺にとってこうした瞬間が訪れることはなんと言うか、君が俺たちのアルバムを聴いていたって話はよく聞いていたけど、君はフェスを主催するようになって、一緒にステージに立てるなんて、君以上に俺にとって意義のあることなんだ。だって同じことがQティップと一緒にできたら俺は死んじゃうよ。まじで」


Pharrell x Tyler, The Creator "Camp Flog Gnaw 2014"


A Tribe Called Quest - "Bonita Applebum (Pharrell Williams Remix)"


映画『私たちのハァハァ』予告編

タイラー・ザ・クリエイター「Fuck It」



 Tyler, The Creator(タイラー・ザ・クリエイター)が新曲「Fuck It」で、タイラーのオーストラリア入国を妨害したフェミニスト団体および彼のことを女性差別的、同性愛差別的だと批難する連中に反論している。どうやらタイラーは自分への批難が人種差別意識に根ざしていると考えているようだ。「そんじゃあ、マーシャル(註:エミネムの本名)が同じような問題を引き起こしても、お前らは同じことを言えるのか?黒のメラニン色素が足りないから黙ってんだろう?」。タイラーの痛烈な反論は続く。「友達にゲイがいるのにどうして同性愛差別なんてできるっての?」。一般に差別用語とされている「ゲイ(fag)」の部分をいつもはなんの躊躇いもなく口にしているくせに、この曲に限って「ピー」で伏せているのが、「これで満足なんだろ?」と皮肉たっぷりに言わんばかりで素晴らしい。タイラーのことを同性愛差別的だなんだと批難するひとには、若者の自己実現を応援する『Cherry Bomb』(15年)を聴いてもらいたいとこれまでに何度か書いてきたけど、「Fuck It」で言っていることとほぼ同義のことを『Wolf』(13年)収録の「Rusty」でタイラーはすでに言っているわけで、ということは、タイラーのアンチ連中は『Cherry Bomb』はおろか『Wolf』も聴かないで、『Bastard』(09年)や『Goblin』(11年)の一部楽曲の過激な歌詞だけを取り出して問題人物扱いしているってことでしょ。そりゃ、やってらんねー(fuck it)って思うわな。

Tyler, The Creator - "Fuck It"



2015年10月12日月曜日

ロジック『The Incredible True Story』のアートワーク



 Logic(ロジック)の2ndアルバム『The Incredible True Story』(15年)のアートワークが公開された。宇宙船を操縦するロジックと仲間たちの姿が描かれている。なんだかウェス・アンダーソンの『ライフ・アクアティック』(05年)っぽいなあと思ったら、アートワーク制作者のSam Spratt(サム・スプラット、ロジックの前作『Under Pressure』(14年)やJanelle Monae(ジャネル・モネイ)の『The Electric Lady』(13年)、Childish Gambino(チャイルディッシュ・ガンビーノ)のフリーダウンロード・シングルなどのアートワークを手がけた人物)いわく、実際にシンメトリーな構図などはウェス・アンダーソン作品から構想を得たとのこと! そのほかにも、ロジックの着る赤い宇宙服は大友克洋の『AKIRA』(88年)、黄色い宇宙服はロジックの大好きなクエンティン・タランティーノの『キル・ビル』(03年)からインスピレーションを得ているらしい。



Logic - The Incredible True Story (Album Trailer)



タイラー・ザ・クリエイター『The Jellies』



 Tyler, The Creator(タイラー・ザ・クリエイター)制作のアニメシリーズ『The Jellies』(15年〜)がGOLF MEDIAで配信開始された。『The Jellies』はクラゲの一家のお話。クラゲの家族に拾われ養子として育てられてきた少年コーネルが巻き起こす騒動を、人種や同性愛をネタにしたブラックな笑いとともに描くコメディ作品だ。コーネルはブロンドヘアと青い瞳を持った典型的な白人キャラクターだが、トレードマークの緑のキャップをはじめとしたその服装から察するに、モデルとなっているのはタイラーなのだろう。加えてコーネルにはIQが100万を超える(!)オタクな妹がいるという設定だけど、同じくタイラーにも妹がひとりいることを考えると、このクラゲ一家自体がタイラーの家族をモデルにしているように思える。でも一点、コーネルとタイラーの家族構成で大きく異なる点がある。父の存在である。第三話まで見終えて強く感じるのはタイラーの父への思いだ。よく知られるようにタイラーの父はタイラーが幼いときに家を出て行ってしまった。『Bastard』(09年)、『Goblin』(11年)といった初期作品には「不在の父」に向けられたタイラーの怒りや呪詛が深く刻み込まれている。一方、『The Jellies』のコーネルはというと、第一話の冒頭、コーネルの16歳の誕生日に養子であることを父から打ち明けられ、それまで嘘をつかれていたことに憤りこそするものの(ていうか、もっと早く気付くだろ!)、お父さんクラゲとは普通の親子関係を築いている。それどころか、毎話コーネルがとんでもない騒動(第二話「AIDS」では、N.W.A.のEazy-E(イージー・E)に憧れるあまり、エイズに自らすすんで罹ろうとしたりと、とにかくハチャメチャ!)を巻き起こすわけだが、物語は事態を解決しようと奔走するお父さんクラゲの「息子を思う気持ち」によって駆動される。『The Jellies』を観ていると、現実の人生で父とふれあうことの出来なかったタイラーが、その穴埋めとして、作品を通じて擬似的に父との交流をはかっているように思えてくる。


The Jellies Season 1 Teaser


Tyler, The Creator - "Answer"



2015年10月4日日曜日

ヤング・サグの作詞術



 Young Thug(ヤング・サグ)のヒット曲「Stoner」を作曲したDun Deal(ダン・ディール)の証言によると、ヤング・サグは録音スタジオで紙に歌詞を書き留める代わりに「奇妙な記号や形」を描いているという。なにソレ?


Young Thug - "Stoner"

タイラー・ザ・クリエイター、イギリスでも入国禁止



『Bastard』(09年)、『Goblin』(11年)におけるTyler, The Creator(タイラー・ザ・クリエイター)の歌詞の内容を問題視したフェミニスト団体の抗議運動によって、オーストラリアへの入国が禁止されたのに続いて、同じく初期作品群の歌詞の内容を理由に、イギリスでもタイラーの入国が認められなかった。前にも書いたけど、タイラーが暴力的、女性蔑視的と言われるような歌詞を書いていたのは昔の話で、今のタイラーは若者の自己実現を応援しているということを知ってもらいたい。イギリス内務省は、タイラー入国禁止の措置に至った理由を「我が国の共同体内における暴力につながりかねない憎しみを助長する容認しがたい言動」のためとしている。タイラーのファンとして当然今回の措置は不当だと思うわけだが、特に納得がいかないのは、そうした問題の歌詞をタイラーがオルターエゴ視点で書いていることをイギリス内務省の役人が知っているということ。それはつまり、「Tron Cat」で歌われるような過激な歌詞も<創作上の表現>であると分かったうえで、タイラーをまるでテロリストみたいに危険人物扱いしているということ。イギリス政府はほんとどうかしてると思う。そういえば、N.W.A.の伝記映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』(15年)の劇中、N.W.A.の歌が「市民を献身的に守る警察官の品位を落としている」として、FBIから警告状が送られてきた場面では、Ice Cube(アイス・キューブ)が言論の自由(free speech)を主張していたけど、過激な歌詞を危険視するよりも、口当たりのよいものしか受け入れない社会、言論の自由が認められない社会の方がよっぽど危険だといえないだろうか。本件に関してタイラーは英紙「ガーディアン」の取材にこのようにコメントしている

これはほんの始まりにすぎない。これからはテレビゲーム、映画といったものも禁止されていくだろう。俺たちはそんな神経質な世界に生きているんだ。それはまるであらゆるものに怯えているような世界。みんながあらゆるものに対して過剰に神経質になっている気がする。もしあいつらが何かを嫌いになるとこうなるってわけ。「なんてこった、俺は黄色が嫌いなんだ。黄色の使用は世界中で禁止にしよう。黄色を金輪際目にすることがないよう、署名活動、ハッシュタグで呼びかけよう。だって俺は黄色が嫌いで、認めないから」


Tyler, The Creator - "BUFFALO"



 

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