2015年6月28日日曜日

呉美保『きみはいい子』



 呉美保監督『きみはいい子』(15年)を観た。Lil B(リル・B)が言うところの"BASED"感溢れるクライマックスが素敵な作品でした。



2015年6月27日土曜日

タイラー・ザ・クリエイターを入国させるな



 もう何なのこれ。腹立たしい。オーストラリアの活動家団体が、オーストラリア公演を控えるTyler, The Creator(タイラー・ザ・クリエイター)の入国を阻止しようと移民相にビザ剥奪を求める嘆願書を提出した。タイラーの「女性差別的」な歌詞を問題視しての抗議活動らしいけど、タイラーが「亡骸になったお前を森に引きずっていって犯してやる("She"より)」とか凶悪なことを言ってたのは昔の話だから。若者の自己実現を応援する『Cherry Bomb』(15年)を聴いてもらいたい。それにしても、こういう良識派ぶった連中からは「レイプなんてとんでもない!」と批難される一方、古参のファンからは「ポジティヴになってつまらない!」とそれとは真逆の要求をされるタイラーは大変だなあ(似たような事例として"Rusty"でも、甘美でメロディアスな曲のファンと暴力的な曲のファンとの板挟みについてラップしていたのを思い出した。"Analog"のファンはレイプに飽き飽き、"Tron Cat"のファンは湖(レイク)にうんざり」)。嘆願書では「今日のオーストラリアでは週に2人の女性が近しいパートナーによって命を奪われています。ヴィクトリア警察ではDV被害者からの通報を10分毎に受けています。このような社会的背景を踏まえるなら、タイラーの歌詞は女性への暴力を助長する危険性を孕んでいると言えるでしょう」とかつらつら書いてるけど、それ本質的にはタイラーと無関係でしょ。犯罪の要因を聴いている音楽とかその人の属性にばかり求める風潮は、そろそろどうにかならないものだろうか。そもそも、『マッドマックス』みたいなバイオレンス要素満載の映画を作っている国の人に、暴力を助長するから暴力表現はよくないとか言われたくない(怒りのデス・ロードは最高でした)。


Tyler, The Creator - "She (feat. Frank Ocean)" 



『Cherry Bomb』批判にタイラー・ザ・クリエイターが反論



 昔の鬱屈したTyler, The Creator(タイラー・ザ・クリエイター)が好きだったと語る元ファンの少年がタイラーをオワコン判定したところ、タイラー本人がそれに反論した。その元ファンの主張を要約すると以下の通り。『Cherry Bomb』(15年)のタイラーは高級車やジュエリーを見せびらかす自惚れに成り下がってしまった。女子とのトラブルに悩む、鬱々としていた頃のタイラーには共感できたが、今はもうできない。

 ファンの心情にしてみれば、これまでのタイラーは、父親がいない、学校に馴染めない、女子にモテない、そんなないない尽くしの冴えない日常を送る「俺たち」の代弁者だったのに、少し有名になって小銭を稼いだからって、急に「翼を見つけろ」だなんて説教垂れやがって、といったところだろう。キャリアの初期から追いかけている熱心なファンであればあるほど、『Cherry Bomb』で「サッド」から「ハッピー」になったタイラーに当惑してしまうのは、女子をプロムに誘うも断られ、腹いせに凶行に及ぶ"Sarah"など初期の暗い楽曲郡を思い返せば、当然のこと。『Cherry Bomb』に収録の"2 SEATER"でタイラーは、ガールフレンドを愛車の BMWの助手席に乗せて疾走する。裏切られた気持ちになるのも分からないでもない。でもタイラーも反論に書いているように、アーティストは成長し、変化していくもの。同じことをいつまでも続けるわけにはいかない。タイラーが素晴らしいのは、そうしたファン心理をきちんと理解したうえで発言しているところだ(好きなアーティストの特定の時期に固執してしまうのはわかる、俺もやってしまうから)。それに、タイラーが「翼を見つけて」ほしいと語りかけている相手というのは、そういったポジティヴなメッセージに反感を覚えてファンを辞めたという今回の少年のような人物なのではないだろうか。ネットばっかやって、だらだらと現状への不満や文句を垂れているのではなく、目標を持って行動を起こせ、と。タイラーが「FIND YOUR WINGS」の三語に込めたメッセージが、元ファンの少年に伝わらなかったのが残念でならない。



2015年6月21日日曜日

タイラー・ザ・クリエイター「ムーン・シアター」



『Cherry Bomb』(15年)では、これまでの作品に見られたファンタジー世界は描かれず、基本的には「素」の Tyler, The Creator(タイラー・ザ・クリエイター)が今の自分について歌っているんだけど、ひとつだけ大きなファンタジー要素があって、それが架空の映画館「ムーン・シアター」である。「BLOW MY LOAD」のアウトロ部分はラジオ番組風になっていて、ムーン・シアターで「三本立て特別上映会」が行われることがアナウンスされる。それを聞きつけたタイラーは続く「2SEATER」と「HAIR BLOW」で、ガールフレンドを愛車のBMWの助手席に乗せ、カナダのシンガーソングライター、Mac Demarco(マック・デマルコ)の『Salad Days』(14年)をBGMにムーン・シアターへと車を走らせるのであった。
 ムーン・シアターは「FUCKING YOUNG」のミュージックビデオのなかにも登場する。この曲のミュージックビデオは、タイラーと年の離れた「若すぎる」ガールフレンドとの悲恋の物語を、ムーン・シアターの客席にいるタイラーがスクリーン越しに観ているというメタ設定。一捻りあるそうした設定もさることながら、「三本立て」というのがどうも気になる。どうして三本なのか。3という数字から連想されるのはタイラーの『Bastard』(09年)、『Goblin』(11年)、『Wolf』(13年)の過去三作品。もしかしたらムーン・シアターで上映される三本というのは、タイラーの過去三作品を暗示しているのかもしれない。スクリーン上で役を演じるタイラーと、ポップコーン片手にゲラゲラ大笑いしながらそれを見つめる客席のタイラーとの関係性は、オルターエゴを「演じて」いた昔のタイラーと、「素」になった今のタイラーとのそれに似ている。フィクションを描くのをやめ、現実の自分を表現するようになったタイラーの心境の変化が、映画館という舞台設定からも読み取れるように思う。

 今タイラーはワールドツアーを敢行中で、世界各都市を飛び回っている。ライブ公演を行うのはもちろんだが、行く先々で映画館を借りて、出張ムーン・シアター上映会を開催しているのが面白い。これまでの上映作品は『ナポレオン・ダイナマイト』(04年)、『スーパーバッド 童貞ウォーズ』(07年)、『ズーランダー』(02年)と、どれもタイラーの大好きなコメディ作品。セレクトが最高すぎる! 9月の東京LIQUIDROOMでの来日公演の際にも、新宿シネマカリテとかで上映会を開催してほしい。


Tyler, The Creator - "FUCKING YOUNG"



They say success is the best revenge〜タイラー・ザ・クリエイター「ジミー・キンメル・ライブ」に出演



 Tyler, The Crestor(タイラー・ザ・クリエイター)がトーク・ライブ番組「ジミー・キンメル・ライブ」に出演。かつてスターバックスで働いていたときのエピソードを披露した。自分のことをクビにした当時の店舗マネージャーに対し、カメラ目線で「この放送を見てるといいんだけど、俺は今でもあんたが大嫌いだからな!」と冗談交じりに話す姿が愉快かつ痛快。"Yonkers"でも(ブランダン・デシャイをディスして)ライムしていたように「成功は最大の復讐」なのだ。


Tyler, The Creator Worked at Starbucks


Tyler, The Creator - "Yonkers"

2015年6月13日土曜日

トラヴィス・スコット「3500」



 Travi$ Scott(トラヴィス・スコット)の新曲"3500"の楽曲タイトルは、Kanye West(カニエ・ウェスト)とKim Kardashian(キム・カーダシアン)夫妻が娘ノース(1歳)に買い与えた「3,500ドルのコート」が由来らしい!
North West rocks estimated $3,500 fur coat in New York City


タイラー・ザ・クリエイター「KEEP DA O'S」とヤング・ニガ「I Just Bought a Bugatti」



 さっきも書いたように、Tyler, The Creator(タイラー・ザ・クリエイター)の"KEEP DA O'S"は拝金主義を信奉する見せびらかし屋を批判した曲。やれ車だ、やれダイヤモンドだと見てくれや外聞ばかりを気にする輩に、そんな空虚なまねはよして、「翼を見つけろ」と諭す。タイラーは機会があるごとに、SNSの「いいね」に執着する現代人に苦言を呈しているけど、モノにしろ、ネット上の承認欲にしろ、外面ばかり気にすることに反対していて、その態度は一貫している。

『Cherry Bomb』(15年)以前にタイラーはYoung Nigga(ヤング・ニガ)名義で"I Just Bought a Bugatti (I'm Happy)"という曲を発表している。ヤング・ニガは複数あるタイラーのオルターエゴのひとり。見た目からして相当ふざけているが、車、カネ、女、銃についてラップするヤング・ニガは典型的なギャングスタ・ラッパーを戯画的に演じてみせるいわばパロディである。よって「ブガッティの新車買って幸せ」と歌うこの曲にも、"KEEP DA O'S"と同じく拝金主義への強烈な皮肉が込められている。"KEEP DA O'S"でも「ブガッティに乗って事故るより、チャリンコのペダル漕いでる方がマシ」って言ってるしね。


Young Nigga - "I Just Bought a Bugatti (I'm Happy)"

How many leaders in the house?〜タイラー・ザ・クリエイターとケンドリック・ラマーのノブレス・オブリージュ



 居丈高で("For Free?")図に乗っていた("King Kunta")が、そんな自分の愚かさに気づき("Institutionalized", "These Walls")、絶望して("u")、ややあって(大幅省略)、最終的にリーダーとしての自覚を獲得する("Mortal Man")。というのが、Kendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)の『To Pimp a Butterfly』(15年)の超大雑把なあらすじである。一方、Tyler, The Creator(タイラー・ザ・クリエイター)の『Cherry Bomb』(15年)も、本作に限定していえば、ケンドリックのアルバムのような起承転結に富んだストーリー構成こそ見られないものの、過去作も含めたディスコグラフィ全体として見たときには、同じくリーダーとしての自覚を獲得する作品という位置付けができるだろう。これまでの作品では複数のオルターエゴが入り乱れる独自のファンタジー世界を構築していたのが、今作では一転して同世代の若者を鼓舞する前向きなメッセージが、ドクターTCでもなければ、ウルフでもサムでもない、タイラー本人の口から語られる。キャリアを積み、富や名声を手にしたケンドリックとタイラーふたりの作品はどちらも、セレブリティ(有名人)の責務=ノブレス・オブリージュへの気づき(HiiiPowerムーヴメントを先導していたケンドリックの場合は、調子に乗って忘れていた使命を『To Pimp a Butterfly』で再認識?)がテーマのひとつであるように思う。歌われる内容もふたりの作品は似ている。タイラーの"BUFFALO"とケンドリックの"i"では「自分に自信を持つこと」の必要性が歌われ、タイラーの"KEEP DA O'S"とケンドリックの "You Ain't Gotta Lie"では拝金主義を信奉して「気取る」ことがいかに空虚であるかが説かれる。以下は"BUFFALO"の拙訳。繰り返される「リーダーは何人いる?」という問いに答えを出す最後の2行が痛快!

リーダーは何人いる?
誰か鏡を持ってこい 俺一人じゃ寂しいぜ
いいね、謝罪、スナップチャットで火を見るよりも明らか
この世界のやつらはみんな自信に欠けている
リーダーは何人いる?
誰かカメラを持ってこい 俺が俺を撮影してやるよ
Tは優れた監督 やつらの視界はぼやけてる
最高のショットを撮ってやるよ
ミズーリの白人警察官みたいに
待てよ
リーダーは何人いる?
誰か俺のアルバムを持ってこい 俺が俺のアルバムを聴くんだよ
飲み物を注いでくれ くそっ、どうしたことやら
ニガ連中はみんなフォレスト・ウィテカーの目みたく傾いてる
待てよ
リーダーは何人いる?
ほら、誰も手を挙げようとしないのは何故なんだ?
言ったろ、それが問題なのさ

 

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