2015年4月27日月曜日

OMSB『Think Good』予想



 OMSBの2ndアルバム『Think Good』(15年)発表に先駆けて公開された表題曲"Think Good"が素晴らしい。おそらく今回のタイトル「Think Good」は「良い(方向に)考える」ということなのだろう。前作『Mr.“All Bad”Jordan』(12年)のときからは想像がつかないほど、"Think Good"でOMSBが吐き出す言葉にはポジティヴなエネルギーが迸っている。前作はビートの「黒さ」もさることながら、OMSBの敵(ダサいライバルラッパーたち、客が不入りのクラブイベント、執拗に職質してくる警官等など)への怒りがぶちまけられた、憎しみと怒りをごった煮したみたいなそのリリックの内容もまたドス黒い作品だった。それが"Think Good"では、そんな当時の自分を省みて「どうせなら前を見よう。やってやれ。俺がOMSB。楽しんでくぜ。Think Good!」と歌っている。OMSBの真の敵はダサいラッパーでもなければ、レイシャル・プロファイリングをする警官でもなく、「ひん曲がった根性」をした自分自身だったのだ! かつて"Uncommon"という曲で「んなもんガソリンぶっかけ火つけちまえ!」と歌っていたときは「怒り」を火に焼べて反逆の炎を燃やしていた。でも今のOMSBが燃料とするのは「不安材料」である。これだけポジティヴであれば、たとえお呼ばれしたクラブイベントで、せっかく遠いところまで足を運んだのにギャラは出ず、おまけに客が全然盛り上がらなかったとしても、「ダーマスにあたる」(©PUNPEE)なんてことはもうないだろう。



何もかもがうるさく感じて
ダサい奴らをただ見下して
裏切ったあいつにフラストレーション
胡散臭い賛辞に睨みきかして
無知をけなし famousにjealous
人のネガティヴだけがよく目立つ
ふてくされたり 怒鳴りあげたり
俺こんなことやるために生きてねえ



2015年4月26日日曜日

タイラー・ザ・クリエイター「SMUCKERS」〜You ain't got no fuckin' Yeezy?



『Cherry Bomb』(15年)の聴きどころは何と言ってもKanye West(カニエ・ウェスト)とLil Wayne(リル・ウェイン)が参加した"SMUCKERS"だろう。曲中でリル・ウェインがTyler, The Creator(タイラー・ザ・クリエイター)のことを「Slime」認定しているのが感慨深い(Slimeはスラングで「仲間、ダチ、ブラザー」ぐらいの意味。ちなみにミックステープ『Slime Flu』シリーズなどの作品で知られるVado(ヴァドー)の話によれば、同語は名詞形でも動詞形でもなんでも有りなんだとか)。さらにそれに対してタイラーがリル・ウェインのことを「Tune(ちゅん)」と呼んでいるのがこれまた感慨深い(Tuneはリル・ウェインの祖母が彼に付けたあだ名。舎弟のDrake(ドレイク)だってそんな風にリル・ウェインのことを馴れ馴れしく呼んだことはないのではないか。リル・ウェインと親しげにヴァースを交換しあうタイラーに嫉妬したドレイクがハンカチを噛む姿が頭に浮かぶ)。タイラーが以前、オッド・フューチャーのコンピレーション・アルバム『The OF Tape, Vol.2』(12年)の収録曲"Rella"において、(カニエの"Dark Fantasy"から引用、意味をツイストさせて)「You ain't got no fuckin' Yeezy?(カニエと共演したことねえのかよ?)」なんてことをふざけ半分に言っていたことを思い返すと、"SMUCKERS"でついに果たしたカニエとの念願の共演の感動もひとしおである。


You Ain't Got No Fuckin' Yeezy?


Hodgy, Domo Genesis & Tyler, The Creator - "Rella"



2015年4月19日日曜日

リュダクリス『Ludaversal』



 Tyler, The Creator(タイラー・ザ・クリエイター)が以前、Ludacris(リュダクリス)に対して、「リュダクリスへ、昔はクソ最高だったのにどうしちまったんだ。今のアンタの曲はゲイみたいなパーティーチューンばっかり。俺が好きだったあの頃のアンタに戻ってきて欲しい」と愛憎入り混じる辛辣なツイートをしているのを読んで、そのときは確かにその通りだなと思ったし、勢い余って「今のリュダクリスって映画『ハッスル&フロウ』(05年)で演じた、売れてダサいことやってるセルアウトラッパーを地で行っているな」などと悪口を言ってしまったのだけれど、『Ludaversal』(15年)を聴いて、それが軽率な発言だったと猛省している。ごめんなさい、リュダクリス。『Ludaversal』最高です。収録曲"Call Ya Bluff"でリュダが言う「てめえ、曲のなかでは勇ましいこと言ってるけどよ、俺の目を見て同じこと言えるのかよ?はぁん?(大意)」はもちろん、彼のことを悪く言う他のラッパーたちに向けられたものだが、同時に悪口を言った自分のようなリスナーも責められているみたいで、聴くたびにギクリとする。途中「8時間勃ちっぱなしで困ってますぅ〜(泣)」なんて大爆笑必至のスキットもあるくらいで、アルバム全編を通してライムにギンギン感が漲っている。とくにギラギラしているのがパンチライン続出の"Beast Mode"。ベスト・パンチラインは「ウィル・アイ・アムにカットを頼まれた理髪師みたくラッパーたちを困惑させる」



Ludacris - "Beast Mode"


Ludacris - "Call Ya Bluff"



タイラー・ザ・クリエイター「Diaper」



 Tyler, The Creator(タイラー・ザ・クリエイター)の『Cherry Bomb』(15年)を聴いて、一部の収録曲に対して「音が荒い」「ミックスが雑」と怒っているひと、または嘆いているひとがいるみたいだけど、「Golf Media」のインタビューでタイラーはそれに関連してこんな興味深いことを言っている。
「(『Wolf』のミックスに満足してないって言ってたよね?という質問に対して)"Cowboy"ではベースにディストーションを効かせて「ブゥオオオオ〜ン」と響かせたかったんだ。俺が適当にリリースした"Diaper"って曲を覚えてる? 1分かそこらの曲なんだけど、ミックスが雑だって散々文句を言われた。でもあれで完璧なんだ。まさにあれが俺の作りたかった音。ベース音をまるで象の雄叫びみたいな轟音にしたかった。音を歪ますのは、俺が何て言ってるか分からないようにするためでもあるんだ。俺の言葉なんてどうでもいいっていうか、ましてや俺は複雑で難解なリリックを書くわけじゃあるまいし。」


Tyler, The Creator - "Diaper"

 

タイラー・ザ・クリエイター「Golf Media」



 Tyler, The Crestor(タイラー・ザ・クリエイター)が4thアルバム『Cherry Bomb』(15年、前作『Wolf』(13年)に続き、今作もジャケだけで10億点の出来!)の発表に先駆けて「Golf Media」アプリのサービス提供を開始させた。「Golf Media」はタイラーやオッド・フューチャー関連のテキストや動画コンテンツが楽しめるアプリ(月額5ドルなり。はじめの2ヶ月はお試しで無料!)。同アプリ内で読むことのできるインタビュー記事にて、タイラーがまたイイ事を言っている。「XXL」誌の企画でNas(ナズ)にインタビューをしたときのことを振り返って、タイラーはこう話している。
「俺が『Illmatic』のことについて訊かないから、みんなは不満だったみたい。(中略)『God's Son』『Street's Disciple』が俺のお気に入りと伝えたら、彼(註:ナズ)は困惑しているようだった。みんなが自分を偽っている。ためしに俺と同年代の奴にお気に入りアルバムを訊いてみるといい。口を揃えて『Illumatic』『Ready to Die』『36 Chambers』 『The Chronic』とか答えるだろう。今回のアルバムには「『Illumatic』より『In Search of...』に影響を受けた/俺はみんなと違うと思い知った」なんてラインもあるんだ。(中略)俺は気取り屋、嘘つき、自分自身に対して100%正直じゃないやつらが嫌い」
 権威主義を批判し、自分に正直になれと説くタイラー。インタビューにあるように、曲中でも歌っているが、よく知られているようにタイラーはN.E.R.D.の1stアルバム『In Search of...』(01年)の大ファンであることを公言してはばからない。タイラーも今や世界中にファンを持つ有名ミュージシャンのひとりなのに、有名になった今でもそれまでと変わらず敬愛するミュージシャンたちへの愛を隠さない。タイラーのこういうリスナー目線のまま「好き」を表明するところが、気取らず馬鹿正直で好き。


Tyler, The Creator - "Fucking Young"



 

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