2015年2月22日日曜日

きゃりーぱみゅぱみゅ「もんだいガール」と坂元裕二『問題のあるレストラン』



 坂元裕二脚本『問題のあるレストラン』にハマっている。男尊女卑社会の暴力性みたいなものをあぶり出し、それに立ち向かう女性たちの姿が描かれる。本作の主題歌「もんだいガール」を歌うのは、きゃりーぱみゅぱみゅ。ファンシーでメルヘンチックなきゃりーと、コメディドラマながらも女性差別というテーマを扱った本作は一見すると食い合わせが悪いように思えるのだが、エピソードを重ねるにつれて、きゃりーの起用が本作のテーマを踏まえたものであるとの思いが強くなっていく。というのも、ほかの女性アイドル歌手の多くが、たとえば制服ほか露出度の高いセクシーな衣装を着て、過分に異性の目を意識しているのに対して、これはあくまで私見だけど、きゃりーは男ウケを狙っていないというか、男に迎合していないというか、女性性で勝負していないというか、性的なものからは遠い存在であるような印象を受ける。彼女を一言で表すなら「カワイイ」がふさわしいかと思うが、この場合の「カワイイ」は、例えるなら小さくて丸っこいものを愛でるときの、無邪気な「カワイイ」であり、そこに性的な含みは一切ない。一方、『問題のあるレストラン』に登場する女性たちはというと、主人公の田中たま子(真木よう子)をはじめとした皆がそれぞれに問題を抱えており、その多くが男尊女卑社会の理不尽に苦しめられている。彼女たちはそれまで苦しめられてきた男たちの視線から逃れ復讐をはかるべく「ビストロ フー」を開店させ、セクハラ元上司たちの経営するライバル店に闘いを挑む。男たちに反旗を翻す(ビストロ フーには実際に旗が掲げられている)たま子たちの姿勢は、男の視線を意識することなく自由に表現活動を行うきゃりーと共鳴しているように思うのである。

 きゃりーと『問題のあるレストラン』の関係性を考えるとき、第5話に象徴的な台詞が出てくる。”きらきら巻き髪量産型女子”こと川奈藍里(高畑充希)の台詞である。本作における川奈さんは、男の前では常に「女性らしく」愛嬌を振りまき、上司からのセクハラ・パワハラは愛想笑いで受け流す、男にとってはたいへん都合のいい、男社会に迎合する存在として描かれる。ただ川奈さんも好きで男に媚びを売っているのではなく、男社会を賢く生き抜く処世術として身につけただけに過ぎない。そのことは第4話で新田結実(二階堂ふみ)が「信じてもないくせに、得意料理は肉じゃがですって言わなきゃいけない宗教に入ってるから嫌いなんです。浮気はバレなきゃいいって言わなきゃいけない宗教に入ってるから嫌いなんです。彼氏に殴られても私の方が悪いって思う宗教に入ってるから嫌いなんです」と指摘した通り。川奈さんの人となりは、「女の価値は、人生でいくら奢ってもらったかで決まるから。割り勘は女の敗北/女は付き合ってる彼氏さんの職業ニアリーイコール」という彼女の人生観にも端的に表れている。おかげで恋愛には不自由しない彼女だったが、そうした八方美人的な態度が災いし、同僚の男性に付き合ってもいないのに彼氏ヅラをされ、ストーカー被害に悩まされることになる。第5話中盤、ストーカー男から逃れ、自暴自棄になっていたところをたま子に保護された川奈さんは、そのお礼とばかりにライバル店に勝つための秘策をたま子たちにアドバイスするのであった。しかしそれは水着で接客するという、いかにも彼女らしい方法だった。そのときの川奈さんの台詞はこうだ。

「えっ、何で皆さん水着着ないんですか?あたしいっつも心に水着着てますよ。お尻とか触られても、ぜんっぜん何も言わないですよ。お尻触られても何も感じない教習所卒業したんで」

「『その服男受け悪いよ』とか言われても、『ああ、すいません気をつけまーす』って返せる教習所も卒業したんで。『痩せろ』とか『ヤらせろ』とか言われても、笑ってごまかせる教習所も出ました。免許証、お財布にパンッパン入ってます」

川奈さんの「いっつも心に水着着てますよ」という一言からも、彼女が常に男の視線を意識していることがうかがえる。そして、水着というと、やはりきゃりー以外の多くの女性アイドル歌手を連想してしまう。水着や制服を着て男性の性的ファンタジーの要求に応える女性アイドルの姿と、男に都合のいい女を演じる川奈さんの姿は重なって見える。男に迎合する川奈さんや女性アイドルと、そうでないたま子やきゃりーは対極の関係にあるといえよう。きゃりーの歌がどうこうと言う以前に、男におもねることなく自分の表現活動に邁進するきゃりーのような女性の存在それ自体が、たま子ら男尊女卑社会に生きるすべての女性への勇気と希望になっているように思うのである。


きゃりーぱみゅぱみゅ - もんだいガール

2015年2月8日日曜日

リル・ウェイン「Drunk In Love」



 たとえ『Tha Carter V』発売延期の理由が、Lil Wayne(リル・ウェイン)が言うように(『Sorry 4 the Wait 2』始まって早々の1曲目では、先ごろ確執が露見したBirdman(バードマン)に裏切られた失望感を、鳥だけに?自分の事を“みにくいアヒルの子”と呼んで表現!)、またジャケットに、幽閉(からの解放)の象徴として手錠が描かれているように、バードマンのせいだとしても、スケートボードに興じたり、アメフト観戦をしたり(Go Pack Go!)と遊んでいる姿ばかりが見受けられては、どうにも釈然としないというか、待たせてごめんね、じゃねえよ!と反発したくもなるのだった。しかし、いざ『Sorry 4 the Wait 2』を聴いてみれば、収録曲のなかには「Drunk In Love」というスケートボード(とセックス)をモチーフにした曲があり、どうやらラップ以外の課外活動もまったくの無駄ではなかったようである。
 毎度のことながら、「Drunk In Love」においても、リル・ウェインは自身のセックス・アピール=男子力の喧伝に余念がない。男子力というと巷では、抱擁力、経済力、話の聞き上手であることなどを指すらしいが、リル・ウェインの場合は否、“技”の高さである。相手の女性の絶頂姿の凄まじさを「俺の肉棒で君は歩くのもままならない/まるで身体障碍者」と、言葉巧みに(ポリティカル・コレクトネスに觝触ギリギリ?で)表現する手腕はさすがのもの。リル・ウェインはさらに、"handicapped"から連想してこう続ける「これで駐車スペースには困らない」。リル・ウェインは相手の女性のことを気遣い、駐車スペースの空きの有無を心配している(発想力がすごい!)。細やかな気配りができるリル・ウェインはやっぱり男子力が高いのである。


Lil Wayne - "Drunk In Love (feat. Christina Milian)"

 

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