2014年12月28日日曜日

TOP 3/2014


TOP 3/2014

#1. SIMI LAB - PAGE2:MIND OVER MATTER

 一段と増した「チーム感」に兎に角やられた。「チームもの」アメコミ作品から名前を拝借した"Avengers"という収録曲一つとっても、彼らがグループであることにこれまで以上に自覚的であることがうかがえる。豪華盤に付属する本作の制作過程を追ったドキュメンタリーDVDでも冒頭部分で”事件”に見舞われ当惑するメンバーたちの姿が映し出されているが、前作『Page1:ANATOMY OF INSANE』(11年)から本作に至るまでの間にSIMI LABはメンバーの脱退(そして加入)を経験している。このこともチームとしての結束力の強化に寄与しているのだろう。そうそう、そのドキュメンタリーDVDの出来もたいへん素晴らしい。枕投げの和気あいあい感たるや! そういった遠征先の宿で見せるコミカルなオフシーンも見所だが、後半のスタジオ作業風景も見応えたっぷりで、普段スタジオのなかで何が行われているのか知らない者としては、"Yawn"のフックを歌うMARIAの節回しについて真剣に議論を交わす一幕が非常に興味深かった。映画『アクト・オブ・キリング』と並ぶ、2014年を代表するドキュメンタリー作品であることは間違いない。またグループの連帯感の高まりは、もちろんリリックの端々にも顕れている。"Kommunicator"でのOMSBのリリックが印象的だ。

実際問題人類みな兄弟は嘘だ
To so hardみた事ない空想だ
有色な人間は黄色や白や黒、
いつだって中傷だ
What's love?うわっ面剥がせば
Blood Apocalypse now
でも小馬鹿にしあう
分かりあうこと放棄しPain分かち合う
全てじゃねえがこんなんばかりだ
でもSIMI LAB、俺の仲間だ
肌は違うけど俺の居場所
MiracleなTeam俺の死に場所
仲間でいてくれてどうもありがとう

仲間との絆について熱く語ることは、ややもすれば内輪ネタに聴こえがちというか、程度によってはときにかっこ悪い印象を与えかねない。でもSIMI LABの場合全くそういった事態に陥っていないどころか、むしろ積極的に彼らの出会いを祝福したくなるのは、各メンバーがSIMI LAB加入以前に経験した差別や迫害、心に抱いていた孤独や疎外感を、前作であったりメンバーそれぞれのソロ作で聴いて知っているから。雑誌『Winkle』のインタビューでMARIAが語る、当時まだひとりで活動していたRIKKIのグループ加入にまつわるエピソードは非常に心温まる。

MARIA:RIKKIを入れようよって思ったときがあって、GRINGO(SIMI LAB主催のパーティ)で自分たちのリハーサル終わったあと、そのときRIKKIはまだひとりでやってたからひとりでリハやってるの観てて。なんであそこでRIKKIひとりなんだろうって気持ちになって、その時点で仲間っぽくない?って。こっちにくるのが普通っていうか。(『Winkle』VOLUME01)

彼らの「チーム感」がもっとも色濃く出た"Circle"は、言うまでもなく「円」と「縁」のダブルミーニングだろう。縁がつないだ点(=シミ)は線になり、更に円となった。SIMI LABは向かうところ敵なしの最強のチームだ。


SIMI LAB - "Avengers"

#2. LOGIC - UNDER PRESSURE

 ”ゲイザースバーグのグッド・キッド”こと、Logic(ロジック)のメジャーデビュー作。と勝手に通称を付けてしまいたくなるぐらいだから、Kendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)との比較を禁じ得ない。非常に”ラフ”(rough過ぎてlaughなんて無理!)な少年期を過ごし、その反動で(?)ポジティヴ思考になったという点ではRIKKIの『BLACKGATE』(14年)とも共振。


Logic - "Under Pressure"

#3. YG - MY KRAZY LIFE

 ギャングスタ未満のヤンキー物語。リークされたケンドリック・ラマーの次作のトラックリストに"Both Sides of Story"というタイトルの曲を見つけ、コンプトンの善良少年と悪童がついに共演か?と心躍らせるも、偽の情報とのことで残念。


YG - "Do It to Ya (feat. TeeFlii)"



2014年12月23日火曜日

ニッキー・ミナージュ「Feeling Myself」〜フェミニズムの行き着く先



 なんじゃこりゃ。Nicki Minaj(ニッキー・ミナージュ)の3rdアルバム『The Pinkprint』(14年)に収録の"Feeling Myself (feat. Beyoncé)"を聴いて、ぎょっとした。フェミニズムの行き着く先を見た気がする。今年は国連「UNウィメン」親善大使として力強いスピーチを行った女優のエマ・ワトソン、女性の自己実現に王子様の愛は必ずしも必要でないと説いたディズニー映画『アナ雪』、シャネルのショーでモデルたちに女性の地位向上を訴えるプラカードを掲げさせたカール・ラガーフェルドなど、様々な場面においてフェミニズムの機運のより一層の高まりを見た一年だった。それらフェミニズム運動の延長線上に件の曲"Feeling Myself (feat. Beyoncé)"はあると言えよう。Beyoncé(ビヨンセ)はフックで次のように繰り返す「アタシは絶好調(I'm feeling myself)」。ビヨンセとニッキーが好調なのは誰もが認めるところだろう。ヒップホップ/R&B界の二大クイーンによるいわゆる”自画自賛”ソングというわけだ。しかしタイトルにもなっているこの"feel myself"というフレーズには俗語で「自慰をする」の意味があることを考えると……。そう、彼女たちは自慰に耽っているのだ! 一般にセックスというと男本位で行われることの多いイメージがあるが、女だってやりたいときにやるのよ!(しかも男の力を借りることなく)といったところだろうか。だとすればそれは即ち、男根主義的なヒップホップの世界でも、女性ラッパーが独力で男性ラッパーに負けず劣らず渡り合えるのだという宣言に他ならない。つまりは彼女たちのように才気ある独立した女性には、男なんぞ不要であると遠回しに言っているのだ。これがただの洒落やダブル・アンタンドルでないことは、二人の前共演曲"Flawless (Remix)"が女性の応援歌であったことを思い出せば分かる。客演参加しているレーベルメイト二人との”お肉の関係”(ルビ:ペログリ、©田中康夫)を否定するところから歌い始めるという一風変わった趣向の一曲"Only"(アルバム『The Pinkprint』収録)でも「独立した女性(independent bitch)」が奨励されている。これぞフェミニズムの極北か。


Nicki Minaj - "Feeling Myself (feat. Beyoncé)"


Beyoncé - "Flawless (Remix) feat. Nicki Minaj"


Nicki Minaj - "Only (feat. Drake, Lil Wayne & Chris Brown)"



2014年12月14日日曜日

タイラー・ザ・クリエイター、かく語りき



 Tyler, The Creator(タイラー・ザ・クリエイター)が自身のFacebookページに投稿した同年代の若者に向けたメッセージがたいへん素晴らしかったので訳してみました。タイラーたちの音楽が多くの若者たちを勇気付けていることは、Faderの「10 Female Fans On Why They Love Odd Future」を読んでもよく分かる。以下拙訳。

ネガティヴな人はみんな俺から刺激を受けて欲しい。俺は23歳にして偉業を成した。それにまだ手を緩めるつもりもない。怯えたり、悲観的になるのはよせ。そうでなく自分を信じること。馬鹿どもの相手をするのはやめろ。クサなんか吸ってないで、やるべきことをやるんだ。自分たちのために。俺にできるんだからみんなにもできるはず。SNSの星に執着するなんて馬鹿馬鹿しい。自分に限界を設けてどうする。自分のことが嫌いな人、自分に満足できない人もいるんだってな。それってなんて悲しいことだろう。そんな考えは今すぐに捨てろ。とはいえ自分を好きになれない奴も中にはいるだろう。みんなは自己評価が低すぎる。そんなんだからインスタグラムの「いいね」に一喜一憂してしまうんだ。そうでなく自分を好きになること。自分のことを信じれば、自分のアイデアに自信が持てる。そうなればいつかなりたい自分になれるから。自分に自信が持てないというのなら、俺がお前の自信になってやる。この先数年の俺の活躍を俺は確信している。他人の意見なんてこれっぽっちも気にしねえ。だって俺は俺を信じているから。もっとたくさん笑え。付き合うなら一緒にいて心地の良い人、向上心を抱かせてくれるような人にすること。負け犬と戯れるのはやめろ。クサを吸ったり、酒を飲んだり、馬鹿騒ぎするためだけに付き合っているような連中とは、とっとと縁を切れ。時間はあっという間に過ぎていき、気づいた頃には生きたいように生きなかったこと、愛すべき人を愛さなかったこと、掴むべきチャンスを逃したことを墓穴の中で後悔する羽目になるぜ。この世にルールなんてもんはない。ルールなんて糞食らえだ。おのれの翼を見つけろ。俺は見つけて、今まさに飛んでいる最中。そしてこのまま飛躍し続ける。でもまずは自分のことを知ること。10歳の頃から俺は俺という人を理解していた。俺は音楽が好きで色彩に興味があった。流行っているから、友達が聴いているからという基準で音楽を聴き、周りが着ているからという理由で服装を選ぶような、他人の真似ばかりする奴らが多すぎる。フォロワーになるのはやめろ。そういった臆病者のくそフォロワーどもはコメント欄で口を揃えて“言うは易し”、“この偽善者が”、“お前は変わった”だなんだと吐かしてやがる。奴らは怯えている。怯えるのはよせ。何でこんなことを書いているのかは俺にも分からない。今俺はバカンスで湖に来ていて、絵を描いたり、音楽を聴いたりしている(CC The Worldをかれこれ6時間近く聴いてる)。そんで気づいたけどよ、特別に理由もないのにバカンスだなんてクレイジーだろ。ずっとこういうのを夢見てたんだ。どうしたらこんなことが出来るかって、それはもちろん自分を信じ、オカンの敷いたレールには乗らず、俺の無謀とも思える考えに賛同してくれる仲間たちに囲まれ、作品を発表し、それを気に入ったみんなが俺のことを信じてくれたから。だから今ここで俺はこうしてられるんだ。みんなには勝利をつかんで欲しいと声を大にして言いたい。嫌なことがあっても笑顔を絶やさず、いい気分でいて欲しい。俺は幸せだし感謝の気持ちで一杯だからいつも跳び回ってるけど、みんなは怯えているように見える。わからないけど、俺が特別なだけかも。まあ知ったこっちゃねえ。せっかく森にいるんだからこの目でヘラジカを見てみたいなあ。そんで写真を撮るんだ、ハハハハハハ。それから人種差別なんてマジクソくだらねえぜ。あと、今週の土曜日にはGOLFの秋冬新作が発売になるぜ。愛してる。みんなには今からそれぞれの翼を見つけて羽ばたいて欲しい。

via. https://www.facebook.com/TylertheCreatorOfficial/posts/345111099004893



2014年12月13日土曜日

デヴィッド・フィンチャー『ゴーン・ガール』



 デヴィッド・フィンチャーの『ゴーン・ガール』(14年)を観た。劇中歌として、Kreayshawn(クレイショーン)の"Left Eye"が使用されているのが面白い。"Left Eye"が使用されている理由はもちろん、この曲がTLCの故Left Eye(レフト・アイ)が浮気相手への仕返しにその男の家を燃やしたという逸話を引用した「復讐ソング」であり、同じように旦那ニック(ベン・アフレック)に浮気され、壮大な復讐劇を演じる失踪中の妻エイミー(ロザムンド・パイク)の心情を代弁しているからだろう。クレイショーンの歌は本作にうってつけなわけだけど、デビューアルバム『Somethin 'Bout Kreay』(12年)が商業的に大コケしてその後とんと名前を聞かなくなったクレイショーンも違う意味で「ゴーン・ガール」なのが何とも皮肉である


Kreayshawn - "Left Eye"


映画『ゴーン・ガール予告編』

2014年12月7日日曜日

ロジック「Metropolis」における、クエンティン・タランティーノをめぐる会話



 Logic(ロジック)は『Under Pressure』(14年)の制作期間中、Quentin Tarantino(クエンティン・タランティーノ)の映画作品を繰り返し観ていたという。スタジオ作業風景を描いたアルバムのアートワークに目を凝らしてみると、ラップトップでは『キル・ビル』が再生されている。収録曲"Metropolis"のアウトロで交わされる女性との会話の中でもロジックはタランティーノの話をしている。「えっ、マジ?『イングロリアス・バスターズ』観たことないの?『ミッション:8ミニッツ』は観た?『ドニー・ダーコ』に出てたあの人のやつだって!」みたいな台詞に親近感を抱く。この他愛もない会話はおそらくタランティーノ作品でお馴染みの「本筋の展開とは関係のない会話シーン」へのオマージュなのだと思う。さらに言うと、ダイナーのシーンから始まるクライムアクション風の"Under Pressure"のミュージックビデオも、タランティーノ・オマージュに違いない。


Logic - "Metropolis"


Reservoir Dogs Opening Scene Like A Virgin

ロジック『Under Pressure』



 Logic(ロジック)のデビューアルバム『Under Pressure』(14年)が素晴らしい。トラブルだらけの粗悪な生活環境が生んだ善良な若者というと、またしても、というか、どうしたってKendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)と比較してしまう(裏を返せば『good kid, m.A.A.d city』(12年)がそれだけエポックメイキングな作品であることの証左でもあるわけだが)。もしくは、SIMI LABのRIKKIを引き合いに出してもよいかもしれない。女兄弟が揚げ物を調理しているすぐ側でクラックの“調理”が行われ、目を移せば別の女兄弟が男に暴行されている。家に帰るとドアに立ち退きを命じるテープが貼られていたことも。母はヤク中、父はどこをほっつき歩いているのやら……といった具合に、ロジックの育った家庭環境はかなり悲惨。ケンドリックの名前を出したくなるのは、ロジックもそうした環境に育ちながらも、周囲に流されることなく品行方正にやっているから。ドラッグの売人だった兄を筆頭に周囲にギャング活動従事者が多くいたにもかかわらず、決してそれらには加わることなく、あくまで傍観者であったというロジックの立ち位置は、ケンドリックと同じだ(Gang Related)。また品行方正なうえロジックは真面目である。"Soul Food"では、女兄弟に暴力をふるう男に復讐心を抱くも「ぶっ殺してやりたい!けど出来ない、それは悪漢のすること、俺は違う」とおのれを律する。なんと真面目なこと!
 このたびDef Jamからめでたくメジャーデビューを果たしたロジック。成功につきものの「友人・知人の増加」はご多分に漏れずロジックも同じようだ。タイトル曲"Under Pressure"のフック部分では、電話でカネの無心をしてくる輩を「お前らにくれてやれるのは電話の発信音だけ!」と一蹴する(ミックステープ『Young Sinatra』シリーズ3作に登場する、ロジックを利用して金儲けをしようと電話で執拗にレコード契約を迫る「Sell Out Records」のマーティ・ランドルフを思い出させる)。この曲ではロジックの父が新しい恋人と遊ぶためのカネ欲しさに電話を掛けてくるが、今言ったようにロジックは電話に出ず、父は留守番メッセージを残している。でもクソ真面目なロジックのことだから、本当はきちんと家族に仕送りしているに違いないのだ。


Logic - "Under Pressure"



 

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