2013年2月17日日曜日

「R.R.E.A.M.」ってナニ?



 ベッドの上でゴロゴロしてくつろぐ姿を収めた、ゆるーいミュージックビデオ「Okay Cupid」のヒットにより、一躍その名が知れ渡った白人女子ラッパー、Kitty Pryde(キティ・プライド)改め、Kitty(キティ)。彼女の最新ミックステープ『D.A.I.S.Y. Rage』収録曲「R.R.E.A.M.」って一体ナニ?


Kitty - "R.R.E.A.M."

 これを「オマージュ」と呼ぶのは少々大げさかと思うが、ニューヨークはスタッテン・アイランド出身の伝説的ヒップホップ・グループ、Wu-Tang Clan(ウータン・クラン)による1993年発表のクラシック、「C.R.E.A.M.」をもじったものであるのは間違いなさそうだ。ご存知の通り、ウータン・クランの「C.R.E.A.M.」は、「Cash Rules Everything Around Me」(カネがすべて)の頭字語。この曲以降、ラップソングにおいては、「cream(クリーム)」が「お金(money)」を意味するスラングとして定着、今日に至るまで広く用いられているわけだが、それでは、キティの件の曲「R.R.E.A.M.」の意味するものはいったい何なのだろうか?


Wu-Tang Clan - "C.R.E.A.M."

「R.R.E.A.M.」でキティは次のように歌っている、

"Rash rules everything around me/Getting drowsy, bena benadryl yall"
(この世は発疹がすべて/眠くなってきたわ、ベナ、ベナドリル)

Kitty - "R.R.E.A.M."

どうやらウータン・クランの「C.R.E.A.M.」のC:Cash(キャッシュ、現ナマ)を、R:Rash(ラッシュ、発疹)に替えたものらしい……って、それ一体どういうこと? 発疹がすべて? うーむ、何だか聴いてるこっちまでむず痒くなってくるような……。
 ちなみに、上記引用箇所後半部に出てくる「ベナドリル」というのは、アレルギー症状やかゆみ症状を緩和する、米国で市販されている薬のこと。副作用として眠気を誘発するらしく、睡眠導入剤としても服用される。

C.R.E.A.M.
可愛い顔して発疹についての曲だなんて、何とも悪趣味なライムをするキティ。ただ振り返れば、彼女は以前にも似たような、これまた“気色の悪い”楽曲を発表している。

 それはキティの2012年リリースの前作『Haha, I'm Sorry』の収録曲にして、先日開催の第55回グラミー賞で年間最優秀楽曲部門にもノミネートされた、カナダ人シンガーソングライター、Carly Rae Jepsen(カーリー・レイ・ジェプセン)によるスマッシュヒット曲「Call Me Maybe」をモロ使いした、「Give Me Scabies」だ。タイトルにある、聞き慣れない単語「scabies」は、「疥癬(かいせん)」というダニの寄生による皮膚感染症のこと。つまり、「Give Me Scabies」とは「私に疥癬うつして」ということ!



 カーリー・レイ・ジェプセンの「Call Me Maybe」は「会っていきなりでこんなのヘンかもしれないけど、これ私の番号だから、電話くれるよね」と、一目惚れした彼に積極的にアプローチをかける、胸キュン女子のラヴソング。


Carly Rae Jepsen - "Call Me Maybe"

 キティの「Give Me Scabies」は、その「Call Me Maybe」から歌詞を引用しているということで、「一目惚れ/思慕」という楽曲のテーマも踏襲、同様に意中の彼への恋心がライムされる。しかし、恋のときめきにルンルン、キラキラしているカーリー・レイ・ジェプセンに比べ、キティの方はというと、

I'd say, "Call me maybe," but you'll probably call me never
I wait forever and ever and ever, whatever

私が「電話くれるよね」と言ったところで、あなたはきっと電話してくれない
それでもずっと、ずっと、ずーっと待ってるからね

と歌うなど、どこか後ろ向きな印象を受ける。このほかにも同曲中のキティは「私はそんなにイケてる女じゃないけど、フルタイムで働いてるの」と、経済/生活面での安定をアピールすることで、ルックス面でのディスアドヴァンテージをカバーし、何とかその意中の彼を自分に振り向かせようとしている。“イケてる女”を豪語してナンボのフィメールMCとしてあろうことか、自身の容姿を卑下するなんて、やはり何だか自信なさげ。

「Give Me Scabies」というと、一見トンデもない曲タイトルに思えるが、これはリリック中で散見されるそうした彼女の自信のなさや、自信がないゆえの切実さを反映して題されたものなのだろう(もちろんユーモアも多分に込められているのだろうけど)。こんな私でも彼とお近づきになれるというのなら、たとえ病気をうつされようが何されようが構わない!疥癬うつして! そんな彼女の自信がないながらもしたたかな恋心が、この曲には込められているように思える。

 ということは、今回キティが「R.R.E.A.M.」という“痒い”曲を発表したのは、「Give Me Scabies」での念願叶って、疥癬をうつしてもらうことが出来た(思いが通じて恋仲になった)ということか? ちなみに実生活でのキティは現在、ニューヨーク在住のトラックメイカー/プロデューサー、Hot Sugar(ホット・シュガー)と交際している。

2017/8/25 追記:その後キティはホット・シュガーと破局。2016年5月にミュージシャンのSam Ray(サム・レイ)と結婚。

 

 

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