2019年3月31日日曜日

リル・ウージー・ヴァート「Free Uzi」



 リル・ウージー・ヴァートが帰ってきた。それもただのカムバックじゃない。“機関銃”(ウージー)の名に恥じない、超強力なライムの弾丸をフル装填しての帰還である。彼がマンブルラッパーと呼ばれていたなんて信じられようか。
 ウージーのことを“短小”(リル)だからって甘く見てはいけない。復帰曲「Free Uzi」ではそれを逆手にとって、「背は高く(トール)ないけど、運動選手みたくガッポリ稼いでる(ボール)」と言ったかと思えば、さらに懐具合を顕示するため、次のように高度なライムもやってのけているのだから、あっぱれというほかない。

We served them packs in the net, we get them racks like Serena
(インター/テニス)ネットでモノを売りさばいて(サーブして)、セリーナ(・ウィリアムズ)みたいにラックス(札束/ラケット)を手につかむ。

 この曲に対してリル・ウェインを引き合いに出してくるアール・スウェットシャートは、さすが折り目正しいラップナードである。「しゃぶられて(ヘッド)、俺の息子の“首”は刎ねられた」(つまり、斬首された生首が血しぶきを上げるように“噴いた”ってことね♡)といったラインにみられる言葉の選び方や表現——グラフィカルな性豪描写——は、たしかにウィージーイズムを感じさせる。究極の知的遊戯たるラップの醍醐味、ここに極まれり。僕が聴きたかったのはこういうラップなのだ。マンブルラップやエモラップを白眼視してしまうのは、ラップに主張や社会的意義(いわゆる“メッセージ”ってやつ)を感じないからでも、ましてや軽佻浮薄なのが嫌いだからでもなく、単純におもしろくないからなのよねえ。今年の最優秀楽曲賞はリル・ウージー・ヴァートの「Free Uzi」に決定。



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