2017年2月25日土曜日

タイラー・ザ・クリエイターは同性愛差別主義者に非ず、再び



 またかよ。もうこれで何度目だろうか。フランク・オーシャンの父カルヴァン・コックジーが息子に対して起こした名誉毀損訴訟のなかで、タイラー・ザ・クリエイターのことが「悪魔主義者」呼ばわりされ批難されている。この訴訟は、2016年に起きたオーランドのナイトクラブ銃乱射事件を受けてフランクがタンブラーに投稿した文章の内容をめぐるもの。問題とされる文章のなかでフランクは、子どもの頃に父カルヴァンと外食に出かけたときのことを回想し、父がトランスジェンダーの女性店員を「ファゴット」「汚らわしい」と呼んだとして批難しているが、父カルヴァンによればそれは事実無根であり、音楽・映画産業における自身の将来にわたる経済的機会を損ねるものだとし、1,450万ドルを請求している。要するに、倅に書かれた悪評のせいで食いっぱぐれたから弁償しろと主張しているのだ。
 フランクの父は息子の書いた文章の信頼性を疑問視するために、タイラー・ザ・クリエイターを不当に利用しようとしている。その主張を要約すると以下のとおり。

・フランク・オーシャンがタイラー・ザ・クリエイターについて文章中で言及していないのには理由がある。フランクは『Blonde』の共作者であるタイラーが、同性愛嫌悪的な歌詞内容を理由にイギリスとオーストラリアへの入国を禁止されていることを知りながら、意図的に言及するのを避けている。
・フランクはLGBTコミュニティへの憎しみを表明するタイラーとの関係を隠蔽することで、LGBTのファンからの支持を保ち、『Blonde』の経済的成功を担保しようとした偽善者である。
・タイラーは悪魔主義者。

 言いがかりもはなはだしい。何度も書いたけど、タイラー・ザ・クリエイターは同性愛嫌悪ではない。「Rusty」を聞いてください。このようなタイラーへの不当な批判には、これからも断固として抗議していく所存である。


 一方でタイラー・ザ・クリエイターに対するまっとうな批判もある。ロクサーヌ・ゲイは著書『バッド・フェミニスト』のなかで、タイラーの言葉遣いを問題視する。「三つのカミングアウトの物語について」と題された章でロクサーヌは、フランク・オーシャンのカミングアウトを賞賛したうえで、オッド・フューチャーの仲間であるタイラーの『Goblin』(11年)が213のゲイ罵倒語を含むとして、痛烈に批判している「タイラー・ザ・クリエイターは、自分にはゲイの友達がいるというあの古くさいごまかしでもって、自分は同性愛嫌悪でないと主張し続けている。加えて彼は自分を弁護するにあたって、曲で「ファゴット」という言葉を何度も何度も何度も使用していることを自分のゲイのファンたちはまったく気にしていないと主張している—連帯免責だ。(中略)前に一歩進むたびに、進歩を引き戻すクソ野郎がいるものだ」。クソ野郎呼ばわりされて悔しいが、「Rusty」におけるタイラーの反論(フランクと何度も共演しているんだから、同性愛嫌悪であるわけがない)を論破していて、言い返したくてもぐうの音も出ない。ゲイ罵倒語を使うのがよくないことだというのは、全くもって正しい。しかし本人が主張するように、タイラーは決して同性愛嫌悪なんかではないし、誰かの性的指向を指してゲイ罵倒語を使っているのではない、ということは理解してもらいたい。それは作品を聴けばわかるはず。タイラーはゲイ罵倒語を馬鹿や間抜けぐらいの意味で使っているのであって、それこそロクサーヌが本のなかで「ジェイZみたいなラッパーは「ビッチ」という言葉をまるで句読点みたいに使」うと書いているような、ラッパー語法とでも呼ぶべき用法のひとつだと思っている。タイラーのことを同性愛嫌悪と見なすわからず屋のために、例を挙げて説明するとしたら、つまりこういうこと「タイラーはホモフォビアじゃないし、このカマ野郎」。



 

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