2016年5月5日木曜日

ゼイトーヴェン、トラップを語る



 ゼイトーヴェンがレッドブル・ミュージック・アカデミー主催のシンポジウムにて、「トラップ・ミュージック」について語った。登壇者はゼイトーヴェンのほかに、メトロ・ブーミン、ソニー・デジタルという顔ぶれ。ソニー・デジタルが「(ゼイトーヴェンが)俺たちを生み出した」「ゼイがアトランタを去っていたら、その時点で終わっていただろう」と言っているように、またメトロ・ブーミンが「ゼイはゴッドファーザー」と最大級の賛辞を送っているように、ゼイトーヴェンがアトランタのトラップ・ミュージックシーンに与えた影響は計り知れない。
 トラップについて語るならば、グッチ・メインにも言及しないわけにはいかないだろう。ヤング・サグが「Again」のミュージックビデオで表現した「グッチへの敬意」はやり過ぎの感もあるが、たとえばアイラヴマコーネンもアトランタのラップシーンの興隆の功労者としてその名前を挙げているように、多くのラッパーがグッチをトラップ・ミュージック発展の最大の功労者だと考えている。それと似たように、プロデューサーにとってはゼイトーヴェンがシーンの立役者として認知されているようだ。またシンポジウムでは、ゼイトーヴェンがヤング・ジージィについて考察している点も興味深い。ゼイトーヴェンいわく、彼がグッチと作ったトラップとジージィのトラップは別物であるという。その要因がグッチの「funny way(愉快なやり方)」だと聞いて、ヤング・サグのようなアトランタの風変わりなラッパーたちにグッチが与えた影響の大きさを再認識。以下は『Fader』に掲載された「What Trap Means, According Zaytoven」の拙訳なり。

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ゼイトーヴェン:「トラップ」について語るとき、多くの場合は違法薬物やなにかの売買が行われる場所を思い浮かべる。でも、俺にとってトラップはあらゆる意味を表す言葉なんだ。トラップとは仕事ーー床屋を営む俺の場合なら床屋もトラップでありーーつまりは金儲けの手段のことなのさ。俺たちの作る音楽というのは、金儲けのために必死にハスリングしているやつらのためのサウンドトラックだと思っている。

俺にとって、トラップ・ミュージックとハスリング・ミュージックは同義なんだ。トラップと聞くと、俺は習熟されていないものを思い浮かべる。それはエッジの効いまとまりに欠けるもの。俺たちは曲作りにあたって、完璧を求めてはいない。強奪やドラッグ取引やその類の話をするのに、清廉潔白で完璧である必要はないからねーー人々は言葉の裏側にあるリアルな思いを感じとりたいんだ。俺の初期の楽曲を聴いてもらえばわかるように、当時はミックスのやり方を知らなかった。録音の方法ですら曖昧だったけど、別に気にしてなかった。ハードなラップとハードなビートがあれば、俺はドラムの音をデカくするだけ。たとえグッチ・メインの言ってることが、俺には何のことだかさっぱりであっても、俺たちはそのまま作業をつづけるんだ。俺にとって、トラップ・ミュージックってのはそういうものだったーーとてもダーティでエッジー。それこそがトラップさ。

俺たちの楽曲はミックスされていない。(グッチ・メインは)ときどき筋の通らないことを言う。それは見方を変えれば面白いことでもあるけど、彼の言葉や立ち振る舞い、暮らしぶりを見れば、彼が歌詞で歌われる通りの人物だということ、つまり本当にドラッグを売り捌いていたってことがわかるはず。曲づくりをするときは、感じたままを音にするようにしている(仕事相手が誰であるかは関係ない)。グッチ・メインのそばにいれば、彼がラップで歌われている人柄そのものだってことがわかる。だから、こいつは盗みを働きそうだばと思えば、俺はそういう音楽を作るだけさ。

昔はよくヤング・ジージィとショーティ・レッドを聴いていた。彼らの作るトラップ・ミュージックは特別なんだ。俺とグッチは「あいつらより良い曲を作るぞ」と対抗意識を燃やしていた。でも、最終的に俺たちが作り上げたものは全く別物だった。ジージィたちのトラップ・ミュージックはとても劇的で、シリアスに響き、まるで映画のようだった。対して俺とグッチがやったのは、キーボードを弾き、そこにフルートとオルガンを加えていくことだった。結果出来上がったものは、トラップ・ミュージックと呼べる代物ではなかった。そこで俺は猥雑なバスドラムを足し、グッチは彼の言葉を乗せていった。グッチはそれを愉快な手法でやってのけたんだーー彼にはカリスマがあったから、俺たちのトラップ・ミュージックは全くの別物になったんだと思う。

いまトラップはEDMと同等の音楽ジャンルになっている。これはたいへんな進歩だと思うーートラップが市民権を獲得したんだ。俺たちの作る醜く猥雑で、雑多なトラップ・ミュージックに人々がこれほどまでに深くのめり込み、一大現象になっていることが驚きだよ。いまやダンスミュージックと言っても過言ではない。まさかこんなふうに俺たちの音楽が聴かれるなんて、これっぽっちも考えていなかったわけだから、本当に大きな進歩だよ。俺たちはただ近所の仲間のために音楽を作っていたのが、こんなにも大きな現象になったんだ。


Young Thug - "Again (feat. Gucci Mane)"

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