2017年5月27日土曜日

RAP NASTY〜『映画と残酷』とタイラー・ザ・クリエイター



 ナマニク『映画と残酷』読了。面白かった!「俺たちの観たい映画を好き勝手にブッタ切ったり、ボカシたりしやがって、けしからん!」という文句に終始することなく、映画の残酷描写が規制されてきた歴史と問題点を、客観的な立場から検証していて、たいへん興味深く読んだ。映倫と聞くと、良識派ぶった顔をして作品の鑑賞を制限する、忌むべき存在という印象を漠然と抱いていたのだけど、本書の記述を読むと、国家による検閲を避けるための自主規制機関という、法規制に対する緩衝材としての役割を担っていた事実がわかる。よく知りもしないのに思い込みで「悪」と決めつける態度は、それこそ本編を観ていないのに、見出しや伝聞だけで残酷映画を不快だとして糾弾する連中と同じわけで、反省。

 第4章「地獄のビデオ・ナスティ 世界最悪の検閲」では、イギリスで行われた法規制の事例が紹介されている。猥褻の烙印が押された映画のビデオソフトが発売禁止の憂き目に逢っているという話を読んで、歌詞の内容が暴力的だという理由からイギリスへの入国禁止措置を受けたTyler, The Creator(タイラー・ザ・クリエイター)のことを思い出した。前に書いたように、この措置は断じて不当。イギリス政府によるタイラーへの処遇には今でも腹が立つ。しかし、残酷映画をめぐる同国の一連の騒動と対応を知って、もともとそういうお国柄なのかもと腑に落ちたところもあった。本のなかで、映像審査機構のスポークスマンによる『悪魔のいけにえ』(74年)公開時の発言「私たちのような学のある富裕層が観るぶんには問題がないが、アホな労働者階級の連中が観たら刺激が強すぎて暴動になるかもしれん!」や、1751年制定の「治安紊乱に関する法律」の文面「下層の人々のために娯楽の場が広がることは、さらなる窃盗や強盗を引き起こすことになる、なぜなら、貧乏人は娯楽のための金を手に入れようと不当な手段に訴えようとするからだ」が引用されているけど、イギリスの暴力表現に対する風当たりの強さは、階級社会(におけるエスタブリッシュメント層の差別意識)という国柄も影響しているのかもしれない。とはいえ、タイラーが入国禁止措置を受けたのは2015年だぜ。もう少し進歩的に考えられないものだろうか。最後に、『映画と残酷』の一節を借りて、タイラーを締め出したイギリスに対して再度問いたい、“今日『Bastard』を聴いて、プロムの誘いを断った女の子を拉致、レイプしたあげく食人行為におよぶヤツがいるのだろうか? もしかしたらいるかもしれないが、果たしてそのすべての原因は『Bastard』であると言えるのだろうか?”


Tyler, The Creator - "VCR"


Tyler, The Creator - "Sarah"

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