2015年6月21日日曜日

タイラー・ザ・クリエイター「ムーン・シアター」



『Cherry Bomb』(15年)では、これまでの作品に見られたファンタジー世界は描かれず、基本的には「素」の Tyler, The Creator(タイラー・ザ・クリエイター)が今の自分について歌っているんだけど、ひとつだけ大きなファンタジー要素があって、それが架空の映画館「ムーン・シアター」である。「BLOW MY LOAD」のアウトロ部分はラジオ番組風になっていて、ムーン・シアターで「三本立て特別上映会」が行われることがアナウンスされる。それを聞きつけたタイラーは続く「2SEATER」と「HAIR BLOW」で、ガールフレンドを愛車のBMWの助手席に乗せ、カナダのシンガーソングライター、Mac Demarco(マック・デマルコ)の『Salad Days』(14年)をBGMにムーン・シアターへと車を走らせるのであった。
 ムーン・シアターは「FUCKING YOUNG」のミュージックビデオのなかにも登場する。この曲のミュージックビデオは、タイラーと年の離れた「若すぎる」ガールフレンドとの悲恋の物語を、ムーン・シアターの客席にいるタイラーがスクリーン越しに観ているというメタ設定。一捻りあるそうした設定もさることながら、「三本立て」というのがどうも気になる。どうして三本なのか。3という数字から連想されるのはタイラーの『Bastard』(09年)、『Goblin』(11年)、『Wolf』(13年)の過去三作品。もしかしたらムーン・シアターで上映される三本というのは、タイラーの過去三作品を暗示しているのかもしれない。スクリーン上で役を演じるタイラーと、ポップコーン片手にゲラゲラ大笑いしながらそれを見つめる客席のタイラーとの関係性は、オルターエゴを「演じて」いた昔のタイラーと、「素」になった今のタイラーとのそれに似ている。フィクションを描くのをやめ、現実の自分を表現するようになったタイラーの心境の変化が、映画館という舞台設定からも読み取れるように思う。

 今タイラーはワールドツアーを敢行中で、世界各都市を飛び回っている。ライブ公演を行うのはもちろんだが、行く先々で映画館を借りて、出張ムーン・シアター上映会を開催しているのが面白い。これまでの上映作品は『ナポレオン・ダイナマイト』(04年)、『スーパーバッド 童貞ウォーズ』(07年)、『ズーランダー』(02年)と、どれもタイラーの大好きなコメディ作品。セレクトが最高すぎる! 9月の東京LIQUIDROOMでの来日公演の際にも、新宿シネマカリテとかで上映会を開催してほしい。


Tyler, The Creator - "FUCKING YOUNG"



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