2015年3月14日土曜日

きゃりーぱみゅぱみゅ「もんだいガール」と『キューティ・ブロンド』



 きゃりーぱみゅぱみゅ「もんだいガール」が素晴らしい! 普段は人混みが嫌で通行するのを避けがちな渋谷センター街だけど、最近は「もんだいガール」がよく流れているので、この曲を聴きたいがために積極的に通るようにしているぐらい好き。「変わりものであることの気骨」をテーマにした歌詞がグサリと心に刺さる。集団社会の同調圧力と闘うこの曲のきゃりーは、これまでのファンシーでメルヘンチックなイメージからは想像がつかないほど勇ましくかっこいい。サビでは「普通になんてなれないでしょ」と歌われるけど、普通や常識(と世間で言われるもの)に対して中指を突き立てる態度は、SIMI LABの「Uncommon」にも通じる(普通って何?常識って何?んなもんガソリンぶっかけ火付けちまえ!)。またこの曲はミュージックビデオも素晴らしい。ビデオのなかで見られるきゃりーのピンクのファッションは、映画『キューティ・ブロンド』(01年)へのオマージュだ。この『キューティ・ブロンド』オマージュが楽曲のテーマに合致していてとても上手い。『キューティ・ブロンド』の舞台はハーバードのロースクール。優等生タイプの学生が集まるロースクールでそのド派手な見た目と振る舞いゆえ浮きまくるエル(リース・ウィザースプーン)が一人前の弁護士になることを目指して奮闘する姿が描かれる。そんなエルの置かれた境遇は、強烈な個性がときに好奇の眼差しの対象となるきゃりーも同様であろうことは想像に難くない。孤立するも周囲に同調するのではなく、友愛会「デルタ・ヌウ」仕込みの西海岸ギャル・スタイルを最後まで貫き通すエルの姿勢(変わりものであることの気骨)は、まさしく「もんだいガール」のきゃりーの姿と重なるものである。『ハイスクールU.S.A.―アメリカ学園映画のすべて』(国書刊行会)でも『キューティ・ブロンド』はこう評されている「この映画の良いところは、従来の女性映画だったらリースが東海岸のロースクールの価値観に染まってサクセスするっていう筋書きになるところが、彼女自身は最後まで変わらないってこと。むしろギャルの知恵を新しい知性としてプレゼンして終わる。『キューティ・ブロンド』はアカデミックな知性にストリート・ワイズが打ち勝つ物語なのね」。

 ここからは深読みかもしれないが「もんだいガール」における『キューティ・ブロンド』の引用が優れていると思う理由は他にもある。「もんだいガール」は坂本裕二脚本のドラマ『問題のあるレストラン』の主題歌だ。男尊女卑社会における理不尽と闘う女性たちを描く『問題のあるレストラン』にはセクハラ男やパワハラ男がうじゃうじゃと登場する(というか、男性キャラのほぼ全員がろくでなしである)。一方『キューティ・ブロンド』にも教授で弁護士のキャラハンという悪役が出てくる。キャラハンは立場を利用してエルにパワハラをしたり、女子生徒にばかりお茶汲みをさせるなど、女性の活躍を邪魔する男根主義的な人物として描かれる。また、ファッション・ビジネス専攻だったエルが猛勉強してロースクールに入学しようと思ったそもそもの目的は、てっきりプロポースしてくれるものだと思っていた彼氏に「ブロンドすぎる(頭が悪い)」という理由で振られてしまったため、その彼の進学先である難関校に自分も合格してみせることで見返して、寄りを戻すことであった。しかし法律を学び、実際に困っている人々を助けていくうちに、一人前の弁護士になってバリバリ活躍することが彼女の目的になっていく。このように『キューティ・ブロンド』は女性の社会進出(とそれを阻害する男性)というフェミニズム的なテーマを扱っている点が『問題のあるレストラン』と似ている。

「もんだいガール」は曲中繰り返される「ただ恋をしているだけなの」というフレーズの「恋」の部分を「仕事」に置き換えてみることで『キューティ・ブロンド』や『問題のあるレストラン』にも共通するメッセージがより鮮明になるように思う。それは『問題のあるレストラン』の田中たま子(真木よう子)のセリフ「いい仕事がしたい。ただいい仕事がしたいんです」にもつながってくる。「もんだいガール」の作詞・作曲は中田ヤスタカ。中田ヤスタカおそるべし!


きゃりーぱみゅぱみゅ - "もんだいガール"


SIMI LAB - "Uncommon"

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